"Caramel"と"Alice's House"


"Caramel"写真クレジット:Roadside Attractions
美容院は女が夢を見る場。客の期待も大きい。美容師たちは、女優のようにしてくれという無理難題に応え、客のペット自慢から仕事の愚痴、恋愛の悩みに相づちをうつ。
美容師たちの悩みは仲間が聞く。夢も語り合う。美容院は家族や仕事のしがらみを離れて、女たちがノビノビと息をする解放区でもある。

偶然か、美容師を主人公にした海外からの映画が二本公開される。作風がまったく違うが、映画で観ることの少ない国の女性たちの現在がビビッドに伝わる。

一つはレバノンの女性監督作品"Caramel"。ベイルートを舞台に、五人の女性たちの不倫や結婚モンダイ、同性愛や初老女性の恋などを温かな笑いに包んでみせていく。

カトリック教徒とイスラム教徒の女達が仲良く助けあう姿が生き生きと描かれ、気持ちが良い。宗教は違っても処女性を第一とする性役割の重圧は同じ、という視点も面白い。

中東からやって来た娯楽性の高いフェミニスト映画と呼べるかもしれない。主演もしているナディン・ラバキ監督が自ら選んだ4人の女性たちはすべて素人。ゴージャスな顔立ちをした女性たちの美しさに目を奪われてしまった。

"Caramel"上映時間:1時間36分。サンフランシスコは、2月1日よりエンバカデロ・シアターで上映開始予定。



"Alice's House"写真クレジット:FiGa Films

もう一作はブラジル映画"Alice's House"。サンパウロでマニキュアリストをしているアリスの物語。

狭いアパートに成長した大柄な息子3人がアザラシのように寝ている秀逸なオープニングから始まり、全編をドキュメンタリー・タッチで見せていく。若い愛人のいる夫、軍人を目指しながら売春をする長男、老母から金を盗む次男など、アリスを囲む男達は不実者ばかり。

そんな時、客として幼なじみの男が現れ、彼女は一時の夢を見る。

中年女性が息苦しさにもがく姿を通して、現代人に通底する生きることの難しさをあぶり出した力作だ。アリスを演じたカーラ・リバスの魂をさらけ出すような演技が素晴らしく、ブラジルの各映画祭で女優賞を総なめにしている。

この作品も出演者のほどんどが素人。演技指導は"City of God"で素人の子供たちを指導したファティマ・トレド。魔法使いのようなコーチだ。監督はドキュメタリー映画出身のチコ・ティシェイラ。

"Alice's House"上映時間:1時間30分。サンフランシスコは1月23日より上映開始予定。劇場未定。