"The Band's Visit”


"The Band's Visit”写真クレジット:Sony Pictures Classics

迷子の警察音楽隊』という題名で日本のミニシアターで公開され、現在も順調に興行成績を伸ばしているイスラエル映画だ。
イスラエルの名優らが主演して、去年のカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞など3賞、世界各地の映画賞を獲得。「間」のおかしさで笑わせるタイプのコメディ作品で、その絶妙なテンポは四半音を特徴とするアラブ音楽から生まれたものかもしれない。

エジプトのアレキサンドリア警察音楽隊が、アラブ文化センターでのコンサートのためイスラエルに着いた。ところが出迎えが来ていない。音楽隊を率いる隊長トゥフィーク(サッソン・ガーベイ)は表情も変えず、自力で目的地に向かうことにする。ところが着いた所は別の町、バスは一日一本という田舎町だ。言葉もあまり通じない隣国の見知らぬ町に取り残された音楽隊。

そんな彼らの窮状を見かねた食堂の女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)が、気さくに声をかけた。美人で気風の良いディナの申し出に、ドギマギする堅物の隊長。彼女の好意を受け、楽隊はこの町でぎくしゃくとした一夜を過ごすことになった…。

謹厳実直な隊長のキャラクターが、懐かしい。規律厳守が第一で、目下の者にあれこれ指図をするクセに、コミュニケーションが大の苦手。昭和の頃、日本にもこういう男性がたくさんいたっけ、などと思っていたら素敵なエンディングが待っていた。人は見かけによらない。

アラブ諸国と争いの絶えないイスラエルだが、昔はアラブ音楽やエジプト映画が一世を風靡。エジプト俳優のオマー・シャリフが日韓関係のヨン様的役割を果たしたエピソードなど、文化的に深い繋がりのあった歴史がさりげなく語られるのも良かった。

イスラエルにあまり良いイメージを持っていなかったが、国と人は別という当たり前のことを再確認。さりげない一夜の交流に込めた作り手の平和への思いがズシリと伝わってきた。監督はイスラエルの若手エラン・コリリン、34才。彼の長編映画デビューでもある。

上映時間:1時間29分。エンバカデロシアターで上映中。

"The Band's Visit”日本語公式サイト:http://www.maigo-band.jp/