"The Other Boleyn Girl"


"The Other Boleyn Girl" 写真クレジット:Columbia Pictures

人気若手女優ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソンの二人が初めて競演する歴史ドラマ。演技派で知られる二人の美女が、姉妹でありながら一人の王を奪い合うというスキャンダラスな役柄に挑んでいる。

これだけでも充分に興味を引かれると思うが、その狙いがかえってこの映画の限界となってしまった作品。ゴージャスな衣装をまとった美しい二人に目を奪われながらも、観終わると野心と欲望の醜さばかりが記憶に残り、あまり良い気分ではなかった。

16世紀、英国のヘンリー8世が、カトリック教会の教皇庁と袂を分かち、英国国教会の原型を成立させるに至った事件を題材にしている。

ヘンリー8世エリック・バナ)には、キャサリンという王妃がいたが王子を産んでいなかった。それを栄達の機会にしようとブーリン家の父は美しい娘を差し出そうと画策。

父の期待に応え姉のアン(ポートマン)が王を誘惑しようとするが、王はなんと妹のメアリー(ヨハンソン)を選んでしまう。すでに結婚していたメアリーだが、宮廷で王の寵愛を受けて懐妊。が、体調を崩してしまう。

淋しい王の気を引き立てようと、フランス行っていた姉がアンが呼び戻される。今度こそは王の寵愛を受けようという野心を燃やすアン。王妃にしてくれなければ愛には応えられないと王に迫るのだった。

妹に王を奪われた悔しさと怒りを隠さない野心的な姉と、本当に王を愛するようになった素朴な妹という対比が際立つ演出だ。王をうまく手玉にとって王妃となり、懐妊もするアンだが、コトは思い通りには運ばなかった…。

原作では14〜5才という年齢らしいが、その幼さでこんな激しい愛憎に火花を散らした姉妹を思うとゲッソリ、結末も恐ろしい。16世紀の英国宮廷とはそういう世界だったかもしれないが、運命に弄ばれた姉妹の苦悩や悲しみがあまり描かれず、現代の女性には共感が持ちにくい話だと思う。

原作はフィリッパ・グレゴリーの同名のベストセラー小説。脚本は "The Queen" を書いたピーター・モーガンジャスティン・チャドウィックが監督をしている。英国でテレビドラマの演出を長くしてきた人で、この作品がどこかテレビドラマの『大奥』と似ているのは、そのせいなのだろうか。

上映時間:1時間44分。29日からベイエリア各地で上映開始。

"The Other Boleyn Girl" 英語公式サイト:http://www.sonypictures.com/movies/theotherboleyngirl/