"Sleepwalking"


"Sleepwalking"写真クレジット:Overture Film

家庭の崩壊で心に傷を負った人々を描くアメリカのインディ系らしい作品。ああ、また同じような話かなと思いながらも、俳優たちの好演にグイグイと引込まれ、最後まで一気に見てしまった。
貧しいシングルマザー、ジョリーン(シャーリーズ・セロン)のボーイフレンドが、麻薬を売って逮捕された。家を追い出された彼女は、11才の娘タラ(アナソフィア・ロブ)を連れ、一人暮らしの弟ジェームス(ニック・スタール)のボロアパートに転がり込む。二人を歓迎するジェームスだが、身持ちの悪い姉の暮らしぶりが気にかかる。そんなある日、姉が娘を置いて消えてしまった。

母に棄てられた娘の衝撃は大きく、優しいジェームスはなんとか少女の気持ちを晴してやろうと旅に出た。行き先はジェームスとジョリーンが育った父(デニス・ホッパー)のいる牧場。タラのためと思ったジェームスだったが、父と向き合うことを無意識に望んでいたのはジェームス自身だった…。

零下数10度のカナダで撮影された背景が、凍りつくような主人公たちの心象をよく表している。アメリカの青年にしては内気で気の弱いジェームスと荒れまくる姉の好対照。なぜ二人はこんな風になったのか。家庭の崩壊、その謎は容易に想像がつく。問題は母に棄てられた11才のタラを30才の叔父がどう守るのか。姉を守れなかった弟が、不器用ながら必死に姪を守ろうとする姿をスタールが静かに好演している。

「絶対に約束は守るから」という叔父の言葉で、タラが大きな目をパッと開いて笑顔を見せる一瞬の真実。裏切られても裏切られても希望を捨てない子供のしなるような強さが眩しい。子供の頃は誰もがこんな明るさを持っていたはず。が、年を重ねるうちに、希望より絶望に親しんでしまうのが人間なのだろうか。

タラを演じた子役が巧い。皮肉たっぷりに母をなじったり、真っ暗な顔をしたり、屈託なく笑ったり、七色に変わる少女の心の動きを自然に演じて、暗い物語に生命を吹き込んでいる。セロンも短い出番だが、傷ついた魂を持てあました母親をデリケートに演じて強い印象を残した。監督はこれがデビュー作のウイリアム・マー。セロンが脚本に惚れ込んでプロデューサーとなり、製作が可能になった彼女の自信作である。

上映時間:1時間40分 

"Sleepwalking"英語公式サイト:http://www.sleepwalking-themovie.com/