”Then She Found Me”


”Then She Found Me”写真クレジット:ThinkFilm

ヘレン・ハントの初監督作品はコメディ。彼女自身が主演もしている。98年に"As Good As It Gets" でアカデミー賞を受賞して以来、良い作品に恵まれない彼女。巧い人なのに残念、と思っていたら、自分で監督した作品で女優としての力量を見せつけた。
まず顔がいい。目尻や口の辺りにシワがあって年相応に自然な感じだ。自分が監督でなかったら、ボトックスでもしてこいと言われたのではないだろうか。年をとればみなこういう顔になる。それをアップで見せるハントの勇気と自信が伝わる。

主人公は、39才の地味な教師エイプリル。養女として育った彼女は、どうしても自分で子供が産みたい。出産可能のタイムリミットが迫る中、ある日突然夫(マシュー・ブロデリック)に別れを告げられる。が、その翌日、生徒の父親ドワイト(コリン・ファース)と出会って恋の予感。ドワイトは、妻に逃げられ二児を育てるちょっと風変わりな男だ。

ところが彼とデートを始めたとたん、前夫の子供を妊娠していることが判明。その上、生母と自称するトーク番組を持つ派手な女性(ベット・ミドラー)が現れて、彼女を振り回し始めた。波瀾続きのエイプリル、はたして彼女は自分の望む幸せを手に入れられるのか?

40才を目前にして子供が欲しいという女性はたくさんいる。笑える状況ではないのだが、この映画はそんな女性の気持ちに添いながら、気持ちよく笑わせてくれる。

嘘つきな生母に怒りをぶつけ、自分に背を向けたドワイトに「一緒にいたい」とまっすぐに迫るエイプリル。自己主張が強いキャリア派というより、困難に向かって体当たりでぶつかる不器用な女性なのだ。

ハントはこんな風に切羽つまった女性を演じると本当に巧い。必死な思いが観客にスッと伝わってくる。"As Good..." でもニコルソンに迫るシーンが良かった。自分の良さ巧さを上手く引き出した監督と言える。

原作はエリノア・リプマンの同名小説(邦題『見つかっちゃった』)。ハントが5年掛かりで脚色した。44才、4年前に娘をもうけたハント。仕事も結婚も子供も欲しい女性を欲張り扱いしない視点に、自身の体験が反映されているのかもしれない。

上映時間:1時間40分。サンフランシスコはエンバカデロ・シアターで上映中。

”Then She Found Me”英語公式サイト:http://www.thenshefoundme.com/