”Standard Operating Procedure”


写真に多く登場するリンディ・イングランド上等兵。禁固3年の判決。
”Standard Operating Procedure”写真クレジット:Sony Picture Classics
イラクアブグレイブ刑務所で起きた捕虜虐待。それを映し出した衝撃的な写真が公表されて4年になる。映っていた兵士は何を思い、どのような経緯で一連の写真は撮られ、米軍はいかにして事件を処理したのか。
このドキュメンタリーは若い兵士たちと刑務所責任者だったカーピンスキー准将、捜査官などへのインタビューを通して、それらの疑問に迫っていく。その実態を再現する映像も鮮烈で、作り手の激しい思いが伝わる力作である。

結果的に処罰を受けたのは、あの写真に関わった若い下級兵士など7人だけ。彼らは実刑判決を受け、階級を落とされた後に軍を追われた。「7つの腐ったリンゴ」と呼ばれ、虐待は彼らの自由意志と判断された。果たしてそうなのか。

「捕虜を裸にして女性の下着をかぶせたり、眠らせないなどの行為は刑務所に着任した時からすでにあった」と兵士たちは言う。CIAや民間の軍事会社から送り込まれた尋問スペシャリストたちによって始められた「尋問」スタイル。捕虜の多くは彼らがどこからか連行し、名前も収監記録もない状態だったという。何人の捕虜が死んだのだろう。それが写真に映っていないアブグレイブの環境だった。

題名の"Standard Operating Procedure"(以下SOP)とは犯罪と認められない標準作戦手順のこと。捜査官は兵士の撮った数千の写真を検分してSOPか犯罪行為かの判断を下した。手に鉄線を巻かれ覆面をされたまま箱の上に立つ捕虜の写真を覚えているだろうか。あれもSOP。政府高官が「テロリストにはジュネーヴ条約は適応しない」と明言する国だ。何をしてもSOPだろう。では、なぜ若い兵士だけが罰せられたのか?

シッポだけ切って逃げた大トカゲ。兵士たちは悔恨と不信を相半ばさせ、または憤懣で顔を歪める。その表情は見ている私自身の顔とも重なる。

監督は"A Thin Blue Line" やアカデミー賞を受賞した"Fog of War" などで知られる社会派のベテラン、エロール・モリス。200時間以上にのぼるインタビューと写真をまとめた同名の本もニューヨーカー誌のフィリップ・ゴーレイヴィッチとの共著で出版されている。

上映時間:1時間57分。サンフランシスコは9日よりカブキ・シアターで上映中。

”Standard Operating Procedure”英語公式サイト:http://sonyclassics.com/standardoperatingprocedure/