"Reprise"


"Reprise"写真クレジット:MIramax Films

繊細な感覚と独特のリズム、スピード感で聞かせる音楽。が、メロディはどこかクラシックで懐かしい。友情と恋、夢と野心に熱くなる20代のメロディだ。鴎外の『青年』や漱石の『心』の内省的な主人公が、現代のオスロによみがえるとこんな感じかもしれない。

学生の頃から同じ作家に憧れ、小説家としての成功を目指して励まし合ってきた23才のフィリップとエリク。最初に送った作品が出版され、注目を浴びたのはフィリップだった。ところが成功を掴み、一目惚れのカリとつき合い始めた頃、フィリップは自殺を図る。

カリは遠ざかり、エリクが傷心のフィリップの面倒をみる。そんな2人を少し距離をおいて見守る友人たち。パンクロックのライブで盛り上がり、過激に生きることに意味を見い出す仲間だ。

書く理由が分からなくなったフィリップといつまでも芽の出ないエリク。近づき過ぎて強く反発し合う2人だ。エリクはフィリップとカリがよりを戻したのを期に旅に出た…。

フィリップ、エリク、カリの友情と恋を中心に、ノルウェーの若者たちの優しい関係が描かれていく。一番過激だったラースは上品な彼女ができると紳士に大変身。エリクは別れ話をしにガールフレンドの家を訪ねて、結局彼女と寝てしまうなど、大真面目なクセにどこか間の抜けた青年たちがユーモラスだ。

一方、不安定なフィリップの精神状態が作品にスリリングなエッジを与える。緊張と緩慢、静寂と喧噪が入り乱れる凝った演出で主人公たちの生きる今がビビッドに活写されていく。

出演者は医者やコピーライター、レコード店員などほとんど素人というのも成功。「心を病んだ新進作家」への過剰な思い入れがなく、ロマンチックなカリのもろさ、危うさがきれいに描かれていたのも良かった。

監督はノルウェーの若手ヨアキム・トリアー、彼のオリジナル脚本、初監督作品だ。遠い親戚に"Dancering the Dark”のラース・フォン・トリアーがいる。日本のコミックとロシア文学を読み、アメリカとフランス映画を観て育ったという監督。その影響がすべて凝縮する真面目でコミカルでパンクでクールな作品だった。

上映時間:1時間46分。サンフランシスコは23日よりエンバカデロ・シアターで上映開始。

"Reprise"英語公式サイト:http://www.reprise-themovie.com/