”A New Earth, Awakening To Your Life's Purpose”のウエブキャスト


写真クレジット:©Harpo Productions, Inc.

最近、ちょっと興奮するイベントがあった。ウエブキャスト(パソコンで見られる動画番組。視聴者が参加もできる。以下WCと略)で世界同時に行われる読書会に参加したのだ。
本のタイトルは”A New Earth, Awakening To Your Life's Purpose” 。直訳すれば「新しい地球、生きる目的にむけた覚醒」。内容を一言で説明するのは難しいが、エゴや思考の呪縛から自分を解き放ち、人が生きる意味は何かを探ろうという本だ。

著者はエックハルト・トール、ドイツ人のスピリチュアル・ティーチャーだ。が、こういう人に有りがちなカリスマ性がない小柄な学者タイプ。訥々と喋る。

日本でも『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』(”The Power of Now”)など数冊の著書が出版されているが、『神との対話』のような大ヒットはしていないようだ。”A New Earth" はまだ日本語に翻訳されていないが、当地ではメガヒット。本屋に行くと目立つところに山積みになっている。

写真クレジット:©Harpo Productions, Inc.
ヒットしたのは訳がある。アメリカで人気の高いTVトークショーを持つオプラ・ウィンフリーがこの本を番組で取り上げたからだ。彼女が紹介する本は、例外なく大ベストセラー。タイム誌からも「世界で最も影響力のある人物」の1人に選ばれている程だ。

その彼女がこの本に感動して、なんとWCで読書会をスタートさせたのだ。週一回一時間半、毎回一章ずつ読み進む形式で、参加費は無料。誰でも登録できる。

構成は、オプラが章のポイントを読み出しながら著者に質問する形で進んでいく。参加者はメールや電話、スカイプ(パソコンを使ったテレビ電話)で、その場で直接質問ができるという画期的な試みだ。

繰り返す否定的な思考、過去へのこだわりや将来への不安から自由になりたい、という思いはもう長いこと持っていた。仏教や中国哲学などを読んで自分なりに学んできたつもりだが、いかんせんこういう話は難解だ。

色即是空は分かっても空即是色の意味はムムム。一人ひっそり考えてきた感じがあった。だが、この読書会に参加して、良い意味で広がりと軽さが生まれた。同じことに関心を持つ人たちと一冊の本で同時に繋がるというのは、それだけで力が湧く。1100万人というアクセス数も力のうちだ。

それにしても、こんな大規模なことを無料で提供できるようにしたオプラという人の肝っ玉の大きさは比類がない。しかも、彼女は、やや概念的に語る著者と参加者を平易な言葉で繋ぐという重要な役割を果たしている。

「現実をありのまま受け入れなさいと言われても、ボスがすごく嫌な男で受け入れられません」という若い女性の質問に対して、著者が原則的に答えると、オプラがそれを引き継いで「最初から重いものを受け入れるのは難しいもの。スピリチュアルな筋力を育てることが必要ね。最初は身の回りの小さなことから始めて、徐々に重いものを受け入れられるようにしていけば良いんじゃないのかしら」といった具合で実に分かりやすい。

トークショーで鍛えた気さくで平明な語り口をそのまま活かして、難解な意識と思考の世界をひも解き、多くの人にエゴからの自由について考える機会を作ったという功績は大きい。自分を知り、自分のできること、自分を活かすことをする。そこに人の生きる意味があるという、この本の内容を身を持って証明してくれたように思う。

このWCは5月上旬に終了したがオプラのホームページ(http://www2.oprah.com/spiritself/oss/guest/oss_guest_etolle.jhtml)に行くと番組(英語のみ)のすべてが無料でダウンロードできる。