"Mongol"


"Mongol"写真クレジット:Picturehouse
この夏、ハリウッドのヒーローものが苦手の向きにぜひお薦めしたい歴史アクション大作。若き日のチンギス・ハーンの苦闘の日々とモンゴル統一までを描いている。
近年、海外の作品に多く出ている浅野忠信が主演し、今年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされて日本でも話題になった。

12世紀後半、部族間の争いが絶えない荒々しいモンゴルの地で、父を失った9才のテムジン(後のハーン)は、受難の少年時代を過ごす。成長して許嫁のボルテと再会を果たしたテムジン(浅野)。幸せもひと時、父の仇にボルテ(クーラン・チュラン)を奪われてしまう。一匹狼の彼は義兄弟の契りを結んだジャムカ(スン・ホンレイ)の力を借りて、ボルテ奪回を企てる。だが、この戦いが二人の生涯にわたる対立の始りとなった…。

話はここまでで半分。物語はテムジンのさらなる受難と妻との夫婦の絆を描き、クライマックスは強大になったジャムカとの宿命の決戦。娯楽映画の王道をいく物語展開だが、見飽きた感じがないのは、ドラマと戦闘場面のバランスが良く、モンゴル文化への興味を掻き立てるからだろう。

壮大なモンゴルやウイグル地区の草原、雪原の息をのむ美しさ、声帯を振動させながら歌うモンゴル独特の喉歌など見どころ聞きどころが多く、映画館で観てこそ堪能できる作品と言える。

また、ボルテの女性像も実に面白い。妻であると共に有能な参謀でもあるボルテ。仇の男の首をかっ切ったり、夫が囚われると別の男と結婚し数年掛かりで彼を救出したり、現代的価値観でははかれない悠久の愛を貫いていく。

全編をモンゴル語で演じた浅野は、大陸的な風貌の俳優たちに挟まれるとやや線が細く感じられたが、兵法を熟知した知将、妻との絆を第一とした異色の英雄を好演していた。モンゴルの人が、自国の英雄を日本人が演じることをどう感じるかは別の話ではあるが。

監督は、96年の"Prisoner of the Mountains"でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞などを受賞したロシアのセルゲイ・ボドロフ。自身の調査を元に謎めいた英雄像を脚本として書き上げた。馬を主人公にした"Running Free"という作品もあり、この映画でも騎馬による戦闘部分が見事な迫力で描かれている。

上映時間:2時間4分。サンフランシスコは20日よりエンバカデロシアターで上映開始。

"Mongol"日本語公式サイト:http://www.mongol-movie.jp/