"When Did You Last See Your Father?”


"When Did You Last See Your Father?”写真クレジット:Sony Pictures Classics

この映画を観たのはだいぶ前だが、思い出すと必ず良い気持ちになる。身体のどこかに固まっていた感情の塊がスーっと消えていく感じが、よくとえられていたからだと思う。
主人公ブレイク(コリン・ファース)は文学賞受賞したばかりの40才の詩人。妻も子供もいて平穏に暮らしていたが、ある日、父アーサー(ジム・ブロードベント)が末期がんで余命数ヶ月と知らされる。ブレイクは、父を家に連れ帰り、母や妹と共に看取ることになった。混乱した気持ちの中で過去を振り返るブレイク。思い出は決して良いものだけではなかった。

傍若無人な父の振るまいにワクワクとした子供時代から、パーティで目立ちたがる父に辟易とし、文学を目指す息子に無理解だった父の言葉に傷付いた少年時代。父の女性関係にも疑惑を持っていたブレイクは、解決のつかない感情を抱えたまま父を看取っていく自分を発見する。一方、ロンドンにいるブレイクの妻は、家族に何も語らない夫にいら立っていた。

女性にモテた父に競争心を持ったブレイクだが、成功した自分を認めて欲しい思いもある。その一方で、いつまでも子供扱いする父に軽い憤りを感じたり…。親子であり競争相手でもある曰く言いがたい父と息子の関係。互いをあるがままに受け入れるというは、親子だからこそ至難のことなのかもしれない。

そんな関係をドロドロとした感情表現を抜きに、透明感のある映像でみせた演出が光る。監督は英国のアナンド・タッカー。"Hilary and Jackie"(九八年)というやはり競いあった姉妹を描いた秀作がある。

知的でやや生硬な息子と無神経だが愛すべき父を、英国の実力派俳優ファースとブロードベントが自然に演じて、この作品の大きな見どころになっている。
原作はブレイク・モリソンによる同名の伝記的エッセー (邦題『あなたが最後に父親と会ったのは?』)。題名の質問を「父が一番父らしかった時は?」と問い直し、振り返ってみてはどうだろう。

上映時間:1時間32分。サンフランシスコはクレイ・シアターで上映中。

"When Did You Last See Your Father?”英語公式サイト:http://www.sonyclassics.com/whendidyoulastseeyourfather/