"Tell No One"


"Tell No One" 写真クレジット: Music Box Films
最愛の妻マルゴ(マリ=ジョゼ・クローズ)が惨殺されて8年、今だに彼女を想い続ける小児科医のアレクサンドル(フランソワ・クルゼ)。そんな彼の元に「誰にも言わないで」と書かれた謎のメール画像が届き、そこには妻とそっくりな女が写っていた。
アレクサンドルは動転して旧友のエレン(クリスティン・スコット・トーマス)に相談する。彼女は妹の「妻」でもある女性で、半信半疑ながらも彼に力をかすことに…。

その頃、妻が殺された現場から二つの死体が発見され、状況証拠から事件当時現場にいたアレクサンドルに嫌疑がかけられた。しかもマルゴの親友が、彼が会った直後に殺され、アレクサンドルはいよいよ窮地に追い込まれて行く。

次々と浮かび上がる妻の死の謎を追いながら、警察と正体不明の殺し屋に追われる主人公という大忙しの設定だ。

登場人物も、トボケた味の刑事(フランソワ・ベルレアン)や、マルゴを思う警察署長だった父(アンドレ・デュソリエ)、男の心意気をみせるギャング、切れ味の鋭い女弁護士(ナタリー・バイ)など多彩。あれよあれよと言う間に複雑な話が動き、謎もなかなか明かされない。

よくできたミステリー映画だと感心しつつ、アメリカ映画みたいだな、と思っていたら原作はアメリカのミステリー作家のものだった。ハーラン・コーベンのヒット・ミステリー小説(邦題『唇を閉ざせ』)が下地で、原作の舞台はニューヨークと知って、なるほどと納得。

善玉と悪玉が分かりやすく描き分けられていることや、スピーディなアクションの連続など実にアメリカ映画っぽい。妻を殺された男が主人公というのもハリウッドの定番で、同じ脚本でベン・アフレックが主演しても全然おかしくない。でも見たいか?

ところが、同じミステリーもフランスで料理すると素材も違って味わいも新鮮だ。贅沢にフォアグラやトリュフのスライスも添えました、という感じでジャン・ロシュフォールを始めとしたフランスの名優達が多く出ているのもオイシさの秘密。殺し屋や刑事、弁護士に女性を配したのもピリッとしたスパイスになっていた。

監督は俳優でもある若手のギョーム・カネ。彼が33才の時の作品で、06年にフランスで大ヒットし、フランスのアカデミー賞であるセザール賞監督賞を受賞。主演のクルゼも疾走感のある会心の演技をみせて同賞の主演男優賞を受賞している。
最後に難を一つ、白地の上に白の字幕は読みづらかった。

上映時間:2時間5分。11日よりサンフランシスコはエンバカデロとカブキ・シアターで上映開始。

"Tell No One" 英語公式サイト: http://www.tellno-one.com/