"TRANSSIBERIAN"


"TRANSSIBERIAN" 写真クレジット: First Look Studio
ハラハラさせられっぱなしの上出来のスリラーなので紹介が難しい。何も知らないで観た方が絶対楽しめる。という訳で紹介は導入部だけにしよう。
平凡なアメリカ人夫婦、ジェシーエミリー・モーティマー)とロイ(ウディ・ハレルソン)は、中国からの帰途にモスクワに寄っていこうと、北京からシベリア鉄道に乗った。車内で若いカップルと知り合い、4人は途中駅で休憩のために外に出た。ところが、列車は夫だけを残して出発してしまう。

この後の展開がまったく読めない。どう読めないかの説明をしても、人物説明をしても面白さが半減してしまう。よく書けた脚本(ウィル・コンロイ)だ。

列車(最近は飛行機)という動く密室を利用したスリラー映画は多く作られていて、その傑作と言われるのが70年前に作られたヒッチコックの『バルカン超特急』。この映画もヒッチコックへのオマージュっぽい作りだ。

女性が危機に巻き込まれるプロットや、心理描写よりも畳み込むように危機が連続する点など、共通項は多い。主人公を囲む環境をうまく 利用するのもヒッチコックの得意とするところで、ここでもシベリア鉄道がフルに活かされている。

ソビエト時代は整備されていたらしいが、今は見る影も無い車内。トイレは詰まっているし、英語は通じない。こわーい女車掌はロシア語でどなりまくるし、外は零下23度の雪だ。こんな悪環境の列車内で事件に巻き込まれてしまったら… と想像するだけで危機感が一層強まる。アクション・スリラーにはまったく不向きなモーティマーが、素晴らしい演技で観客をひっぱっていく。エンディングもニヤリとしたくなる良さだった。

今年はベン・キングズレーの当たり年か、ここにもロシアの刑事役で出てくる。この男の説明もしない方が良いだろう。という訳で何も解説できなかったが、スリラー好きにぜひお薦めしたい作品。

監督は "Machinist" のブラッド・アンダーソン監督。共同で脚本も書いている。"The Wire" などテレビの刑事ものの演出を多くしているが、もっと映画を作らせたい実力派監督だ。

上映時間:1時間51分。サンフランシスコはブリッジ・シアターとセンチュリーSFセンターで上映中。

"TRANSSIBERIAN"英語公式サイト:http://www.firstlookstudios.com/films/transsiberian/