『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』
『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』写真クレジット:First Look International
最近の日本映画の中で監督の名前だけで観てみたいと思わせる人の一人に三池崇史がいる。Vシネマ出身で、不可思議なユーモアのあるバイオレント、ホラーものを得意とする監督だ。
クエンティン・タランティーノなど彼のファンは海外に多く、当地でもしばしば彼の作品が劇場公開される。カンヌ国際映画祭にVシネマとしては初の『極道恐怖大劇場 牛頭』(凄い題名!)を出品したことでも知られる人だ。
毎作品、何が出てくるのかまったく分からないのが最大の魅力。この作品では西部劇と時代劇をミックスし全編英語で製作した。
イタリアで作られた西部劇がマカロニ・ウエスタンなら、日本バージョンはスキヤキ・ウエスタンということらしく、どこまでが本気で冗談なのか分からないのが三池ワールド。日本では大きなヒットをしなかったようだが、俳優たちが自由に大暴れしているのがビンビンと伝わる怪作だった。
埋蔵金を巡って赤組平家と白組源氏が抗争を繰り返している寒村が舞台。頭目は老かいな平清盛(佐藤浩市)とクールな源義経(伊勢谷友介、好演)。その村に謎のガンマン(伊藤英明)が流れつき、両ギャングから用心棒の引き合いがくる。それが引き金となって抗争はエスカレートして行く…
物語は完全に『用心棒』からイタダキだし、メチャクチャなおふざけ映画のような見かけだが、あれほどの名作をすっかり壊して三池映画として作り変えた気概に感心する。『用心棒』以外にも『真昼の決闘』からのイタダキやマカロニ・ウエスタン風のハードなガンプレーなどアクション・シーンが大きな見どころ。
もったりした演技が得意の桃井かおりが素早いガンさばきを見せたり、最後に流れる北島三郎の主題歌も素晴らしく、お楽しみも盛りだくさんだ。
フトこれはタランティーノ監督の ”Kill Bill" への返歌のような映画ではないかと思った。
映画好きなら誰も知ってる名場面を再現しながら、時代劇、西部劇というジャンル映画への尽きせぬ愛情を表現している点で共通している。共に一般受けする作風ではないが、シネフィル(映画狂)という言葉がピッタリくる日米の映画監督だ。
そんな三池に応えてか、出演者も安藤政信、小栗旬、香川照之、木村佳乃、タランティーノ、石橋貴明、石橋蓮司、堺雅人、塩見三省、田中要次など豪華だ。
上映時間:2時間1分。英語タイトルは”Sukiyaki Western Django”。9月19日より劇場公開予定。
『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』日本語公式サイト:http://www.so-net.ne.jp/movie/sonypictures/homevideo/sukiyakiwesterndjango/