”Battle in Seattle”


”Battle in Seattle”写真クレジット:Redwood Palms Pictures

1999年11月にシアトルの街で騒乱があった。スターバックスやGAPのウインドウに投石がされ、警察がデモ隊に催涙ガス弾を撃つニュースに衝撃を受けた記憶がある。国際通商ルールを協議する世界貿易機関(以下WTO)閣僚会議に対する抗議行動から始まった騒乱だった。
この映画は平和的に始まったデモ行進が騒乱へと到る5日間を、活動家、ニュースキャスター、警官とその妻、市長、そして会議に参加したアフリカ代表と学者など、さまざまな視点を通して再現した群像劇。

当時のニュースフィルムを多用して騒乱の激しさや警察の暴力的なデモ規制の様子を見せながら、登場人物たちにとっての事件の意味を立体的に描こうとした意欲的な作品だ。論議よりも個々のドラマに焦点がおかれた点が観やすく、終わると熱い勇気がわいてくる。それと共に、WTOが押し進めるグローバリズムの問題があまりにも多岐にわたっていることに驚かされた。

多国籍企業による発展途上国の資源独占と自然破壊や、子供や女性の劣悪な労働環境から始り、世界銀行IMFの主導による金融のグローバル化によって富める国だけが利益を得ていく世界経済構造、医薬品の人道的流通を阻む利潤至上主義、食品の安全性問題など数え上げるとキリがない。

これだけの問題を含んだ騒乱の背景を劇映画として描こうとしたスチュアート・タウンゼント監督の意気込みに脱帽だ。これが初監督作品で、ボディ・ショップの創業者アニータ・ロディック(昨年急逝)の本に刺激されて映画化を思い立ち、題名の”Battle in Seattle”も彼女の本からもらった。

99年当時は貿易会議に抗議する意味が今一つ掴めなかったが、今になってみると地球温暖化金融危機などグローバル化の問題は明々白々。先見性のある抗議行動だったことが判る。激しい抗議によって会議は決裂、逮捕された人々もすべて釈放というリベラルな街シアトルらしい結果になったことも特筆したい。

作品テーマに賛同して集まった出演者はミシェル・ロドリゲス、マーティン・ヘンダーソンシャーリーズ・セロンウディ・ハレルソンレイ・リオッタコニー・ニールセンなど。映画の公式サイトもグローバル化の問題点を詳しく取り上げている。

上映時間:1時間38分。19日からエンバカデロ・シアターで上映中。

”Battle in Seattle”英語公式サイト:http://www.battleinseattlemovie.com/