"The Secret Life of Bees"


"The Secret Life of Bees" 写真クレジット:Fox Searchlight Pictures

ニューヨーク・タイムズ紙で2年間もベストセラー・リストに載り続け、世界23カ国語で翻訳された人気の高い小説(著者スー・モンク・キッド、邦題『リリィ、はちみつ色の夏』)の映画化。
母の死の秘密を抱え、冷たい父の仕打ちに耐えてきた14歳の少女が、家族以外の人々の愛にふれて成長していく姿が瑞々しい秀作だ。
主演は名子役で知られたダコタ・ファニング。今や愛らしいティーンで子役からの脱皮の時期なのだろう。親の愛に恵まれなかった少女の悲しみや憤り、夢や追憶などさまざまな感情に揺れる思春期の少女の情感をデリケートに演じている。

舞台はまだ人種差別の激しかった1964年のサウス・カロライナ。貧しい農夫の父(ポール・ベタニー)と母親がわりの子守りロザリーン(ジェニファー・ハドソン)と三人暮らしのリリィ(ファニング)。

ある日、初めての選挙登録に勇んで出かけたロザリーンが白人男たちに殴られ、あげくに逮捕されてしまう。

それを知ったリリィは彼女を病院から連れ出し家出。行くあてもない二人だったが、旅先で黒人のマドンナの絵柄のついた蜂蜜の瓶を見つけ、その蜂蜜を作っている家を訪ねた。そこでリリィはかつて見たことないない文化的な暮らしをしている三姉妹と出会う。

養蜂家で自信に満ちた長女オーガストクイーン・ラティファ)、誇り高い教師のジュン(アリシア・キーズ)、繊細な神経を持つ料理担当のメイ(ソフィー・オコネドー)。強烈な個性を持った大人の女性たちの愛に包まれ、頑だったリリィの心が癒されていく…

原作がよく書けているのだろう。自分は親の愛に値しないと信じて来た少女と、厳しい差別の中で凛々しく生きるアフリカ系の女性たちの関係が、力強く感性豊かに描かれている。全体にややきれい過ぎるきらいはあるが、原作の魅力を引き出し、女性たちの勇気と愛を真っすぐに描きたいという高い志が気持ちよく伝わった。

監督と脚本は "Love & Basketball" で注目を浴びたアフリカ系のジーナ・プリンス=バイスウッド。原作にひかれて集まった俳優たちが皆、生き生きと美しく描かれている。とりわけメイを演じたイギリス俳優のオコネドー(『ホテル・ルワンダ』)が素晴らしい。大きな哀しみに押しつぶされながら、子供のように無邪気な笑顔をみせる表情に見とれてしまった。

上映時間:1時間49分。各地のシネコン等で上映中。

"The Secret Life of Bees"英語公式サイト:http://www.foxsearchlight.com/thesecretlifeofbees