"American Blackout"など


"American Blackout" 写真クレジット:Guerrilla News Network
大統領選挙の前なので新作映画の紹介を休み、ブッシュ政権の8年を振り返るドキュメンタリー映画を何作か紹介したい。政権の負の遺産ともいうべき、不正な選挙操作やイラク戦争の背景などを取り上げた批評性の高い作品を中心を選んだ。
各作品共に、事件に関連した政治家やCIA、ペンタゴンの職員、外交官、ジャーナリストなどが証言し、ニュースでは伝わらなかった生の声が記録された力作ばかりだ。

まず、2000年の大統領選挙の疑惑を扱った2作品。
"American Blackout"(06年、92分)
サンダンス映画祭で審査員賞を受賞した日系のイアン・イナバ監督作品
ジョージア州上院議員シンシア・マッキニーを中心に据え、選挙人名簿のデータベースに意図的な工作がされ、アフリカ系の投票権が不正に奪われた事件を取り上げている。マッキニー議員はイラク戦争を当初より一貫として批判。テロリストと中傷された彼女の政治家生命をかけた闘いも追うパワフルな作品。ちなみに彼女は今回の大統領選で緑の党から大統領候補の指名を受けている。
"American Blackout"英語公式サイト:http://www.americanblackout.com/

"Unprecedented: The 2000 Presidential Election" (02年、49分)
ジョアン・セクラー、リチャード・レイ・ペレズ監督作品
フロリダ州における大統領選の投票集計疑惑を取り上げ、問題点を順序立てて追いながら、不正な操作があったことを浮かびあがらせていく。これが民主主義を標榜する国で起きたことを思うと愕然とさせられた。ナレーションはピーター・コヨーテ
"Unprecedented: The 2000 Presidential Election" 英語公式サイト:http://www.unprecedented.org/


"Iraq for Sale: The War Profiteers" 写真クレジット:Brave New Films
次はイラク戦争を扱った3作品。
"Uncovered: The Whole Truth About the Iraq War"(03年、80分)
続編 "Uncovered: The War on Iraq" (04年、83分)
現在公開中の『W.』でも描かれていたが、いかにしてイラク戦争の開戦が決まっていったのか。このドキュメンタリーでは、大量破壊兵器の存在をめぐって情報機関や武器監査官がどのような報告をし、その内容がいかに歪曲されていったのかについて当事者が生々しい証言をしている。CIAやペンタゴンの調査員たちの政権への失望と怒りが真正面から映し出され、興味深いものがあった。
英語公式サイト:http://www.truthuncovered.com/

また、イラク戦争継続の一因に、戦争関連企業の利益保護があるという鋭い切り口で戦争の実態に迫る"Iraq for Sale: The War Profiteers"(06年、75分)も必見。
民間軍事会社BlackwaterやCACI 、Titan、建設会社 K.B.R(テキサスの石油企業 Halliburton の子会社)などが米軍と巨額の契約結び、かつては軍が担っていた捕虜の取り調べから基地警備、建設、食事の準備まで外注されている奇妙なイラク戦争の実態が暴かれている。
"Iraq for Sale: The War Profiteers"英語公式サイト:http://iraqforsale.org/

上記3作の監督はすべて社会派のベテラン、ロバート・グリーンウォルド。これらの作品の一部はNGOのMoveOn などの資金提供によって製作された。彼のBrave New Filmsの公式サイトを覗くと、イラク戦争や大統領選挙などの最新映像が掲載されている。http://bravenewfilms.org/

紹介した作品はすべてDVD化されているので、レンタルなどを通して鑑賞可能。まだGoogle Videoで一部を観ることも出来る。それぞれにコンパクトに要点がまとめられたドキュメンタリーばかりなのでぜひお薦めしたい。