"The Boy in the Striped Pajamas"


"The Boy in the Striped Pajamas" 写真クレジット:Miramax Films
1940年代を背景に、ナチの父を持つ少年とユダヤ人の少年の運命的な出会いを描いてベストセラーになった同名小説(邦題『縞模様のパジャマの少年』)の映画化である。
主人公は8歳の少年ブルーノ。ナチ将校の父に新しい任務が与えられ、ブルーノは母と姉と共にベルリンを離れる。人里離れた屋敷に越して来たものの、知らない土地で友だちもいない彼は退屈だった。
ある日、外出をかたく禁じた母の言葉を無視して家を抜け出たブルーノは、縞模様のパジャマを着た少年と知り合う。巨大な鉄条網の向こう側にいるその少年の名前はシュムール。ブルーノと同じ八歳だった。お腹が空いたというシュムールのために食べ物を届けるブルーノ。父親が大好きなところもそっくりな二人は仲の良い友だちになっていく。
生活に変化が起きたのはブルーノだけでは無かった。収容所ガス室の煙が見える土地に越してきたことに仰天した優しい母(ヴェラ・ファーミガ)は、日に日に夫(デヴィッド・シューリス)の任務や信条に抵抗感を持ち始める。反面、姉はハンサムな若いナチ将校に惹かれてにわかにファシスト少女に変貌。
ナチ思想が平穏だった家族を蝕み始め、忌まわしい運命へと引きずり込んでいく。

ホロコーストの悲劇を加害者家族の側から描いた優れた試みで、エンディングの衝撃は忘れられない。だた、自分とシュムールの置かれた立場の違いがまったく把握出来ない主人公が気になった。彼の無垢さばかりが際立って、子供らしい繊細さが感じられなかったのは、演出の問題だと思う。

原作はアイルランドの作家ジョン・ボインが書いたもので、児童書として書かれ世界30カ国語に翻訳された。
全体に寓話的で、汚いものにベールを被せて見せているような感じがあったのは、主人公と同世代の観客への配慮なのかもしれない。
大人の方には、ラホス・コルタイ監督 "Fateless"(05年)をお薦めしたい。収容所に送られた実在の少年を主人公に、言葉を絶する収容所の非人間性を冷徹に描き出した傑作だ。

監督は"Brassed Off" や "Little Voice" の秀作を撮ってきたイギリスのマーク・ハーマン。
上映時間:1時間35分。サンフランシスコは7日からエンバカデロ・シアターで、サクラメントは14日から上映開始。

"The Boy in the Striped Pajamas"英語公式サイト:http://www.boyinthestripedpajamas.com/#/home