"The Class" (邦題『パリ20区、僕たちのクラス』)


パリ20区、僕たちのクラス』写真クレジット:A Sony Pictures Classics
パリの中でも移民や低所得者が多いZEP(教育優先地域)の中学校の授業風景を描き、昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞したフランス映画だ。
登場するのは同地域の学校に通うアラブ系やアフリカ系、中国系などの生徒たちで、全員が素人。フランソワ・ベゴドーが自身の体験を元に執筆した本を下敷きに状況設定だけ行い、後は生徒たちに自由に発言、行動させたドキュメンタリータッチの作品で、生徒たちが実にリアルだ。

教員会議を生徒が傍聴するなど、新しい教育のあり方を模索するZEPの教育現場。この作品では、新任教師の一年を追いながら、フランス社会の問題だけでなく、多民族が共存する社会が抱える普遍的な問題をも提示していく。監督は『ヒューマン・リソース』など社会派ドラマを描いてきたローラン・カンテ

新任のフランス語教師であるフランソワ(ベゴドー自身が演じる)の授業はなかなか進まない。生徒たちが騒がしいのだ。黒板に例文を書くと、主語の名前をなぜその名前にしたのかと突っかかり、延々と質問攻めにあう。

口答えとあげ足取りの天才という二人の少女は授業をかき回し、後方の席には突飛な発言をしては笑いを取る少年たちも控える。それでもフランソワは生徒たちに誠実に対応する。

フランス語を話さない生徒や、問題を起して他校から転校してきた生徒などが多く、教師たちの生徒への期待度は低い。しかし、理想家肌のフランソワは生徒の可能性を信じている。そんな彼のクラスで事件が起きた。

彼の失言がもとで生徒が騒ぎ出し、興奮した男子生徒が誤って女子生徒に怪我をさせてしまったのだ。懲罰委員会にかけられれば少年は退校となり、父親は彼をアフリカに送り帰すと言う。フランソワはこの少年を救いたいと願うのだが……。

この事件でフランソワの弱さとさもしさを見せたところが、『金八先生』などの熱血教師もののドラマとの大きな違いだ。教師も人の子、カッとなって失言もする。しかし、失言の代価が一少年の将来となると、教師というのはやはり責任の重い仕事なのだと思う。

各自の社会背景を色濃く映し出す生徒たち。しかもティーンとなれば反抗盛りだ。彼らを相手に粘り強く授業を続ける教師たちに改めて敬意を持つと共に、教室は社会の縮図という観を強くした。
難を言えば、早口な生徒たちのやり取りを字幕で追うのは厳しかった。

上映時間:2時間8分。
パリ20区、僕たちのクラス』日本語公式サイト:http://class.eiga.com/story.html