"TOKYO!"


"TOKYO!" 写真クレジット:Liberation Entertainment
フランスと韓国を代表する気鋭の監督3人(ミシェル・ゴンドリーレオス・カラックスポン・ジュノ)が東京を舞台に撮ったファンタジー作品。好きな監督たちのオムニバス作品なので楽しんで観たが、疑問も残った。
一つ目はゴンドリー監督(『エターナル・サンシャイン』)の『インテリア・ザイン』。恋人同士(藤谷文子加瀬亮)が上京してアパート探しをする話からアレレというゴンドリー的な飛躍が始まる。タイトルが後半になって判る 仕掛けが面白い。彼独特の微笑ましさとシュールさがよく出ており、3作の中ではこれは一番良かった。
二つ目はカラックス監督(『ポーラX』)の『メルド』(糞という意味)。東京の下水道から突如現れたメルド(ドゥニ・ラヴァン)という怪人が、繁華街で大暴れ…というもので、カラックス版ゴジラという趣向。怪人のモデルはスペイン画家ゴヤの「黒い絵」シリーズか。
最後はジュノ監督の("The Host")の『シェイキング東京』。引きこもり10年の男(香川照之)がピザの配達人(蒼井優)に恋をした…。日本のコミックの大ファンというジュノ監督らしい、コミックをそのまま映像化した 画面作りが特徴的な軽い小品。しかし、彼のファンとしては、独特のうねるようなドラマが希薄で物足りなかった。
各監督の特徴が良く出ている点でサンプラーの役割を果たしてはいるが、すべてに一口サイズで口淋しい感じが残ったのは仕方がない。でも、無視できなかったのは "TOKYO!" と題しているのに、どの作品からも東京/トウキョウが感じられないことだった。
確かに「ひきこもり」「住宅難」など東京的キーワードは登場するし、コミック・カルチャーの影響は顕著に見られるのだが、扱いが記号的で、肝心の東京の空気が映っていないのだ。ショボイ加瀬亮がひとり東京っぽい雰囲気を醸し出しているだけで、東京はただの書き割りに過ぎない。これなら『ロスト・イン・トランスレーション』(03年)の方が(当時はそう思えなったが)よほど東京の空気を映していた。
この映画をみて一番不満を感じるのは今東京で暮す人ではないだろうか。
上映時間:1時間50分。サンフランシスコは20日からルミエール・シアターで上映開始予定。
"TOKYO!" 日本語公式サイト:http://www.tokyo-movie.jp/