"The Garden"


"The Garden" 写真クレジット:Oscilloscope Laboratories
ロサンゼルスで14年も続いた米国最大(14エーカー)のコミュニティ農場「サウス・セントラル・ファーム」(以下ファーム)の立ち退きをめぐる闘いを追ったドキュメンタリー作品。
闘った農民の多くはラテン系の移民家族たちで、英語を話さない人も多かった。彼らの3年余にわたるスリリングな闘いが丹念に記録され見応え充分の力作だ。監督はスコット・ハミルトン・ケネディ。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

ロサンゼルスの街中に農場が生まれたのは1992年のロス暴動の後のこと。焼き討ちなどで荒れ果てたサウス・セントラルの一角を農地として地域の住民に無料に提供し、地域の癒しと低所得者層の生活の助けとしようという目的だった。

"The Garden" 写真クレジット:Oscilloscope Laboratories
その農園ではメキシコ/中央アメリカの伝統的植物や野菜が栽培され、次第にイベントも行われるコミュニティ集合の場として地元に根付いていった。俯瞰で映すファームは緑豊かでガーデンと呼ぶに相応しく、まさに都会のオアシスという景観。荒れ地を耕し、食べるものを作ってきた人々の豊かさまでが伝わる。

そんなファームに突然の立ち退き命令が張り出されたのが2004年。農場の土地は市から土地開発業者に売られていたのだ。驚いた農民たちは反対運動に立ち上がるが、どこへ相談に行っても「土地は地主のもの。どうにもならない」という返答。そこで、彼らは法廷で争うことに。そして、農民らの弁護士は土地の売買に際して、市議会議員と業者間に不正な取引があったらしいことをつかみ出し、立ち退き延期を勝ち取る。

ところが、アフリカ系地域活動家やユダヤ系地主、メキシコ系政治家などの欲と政治的思惑がからみ、ファームの行方は二転三転。農民側も、仲間割れや映画スターたちの応援、巨額のカンパが届くなどドラマが続いていく。

ふと、土地とは誰のものなのだろう、という問いが浮かぶ。金で売り買いする個人のものでないことだけは確かだが、そんなうわ言はこの世では通用しない。緑の農地をブルドーザーでならし、倉庫にしようが駐車場にしようが地主の勝手である。しかし、そんな土地から私たちはどれほどの恵みを得られるのか。

この闘いにもとより勝ち目はなかった。だが、農民たちは「土地は地主のもの」という当たり前に挑んだ。挑むだけの農民としての自負と自信があったのだ。見終わると、『7人の侍』ではないが最後に勝つのは農民、という思いを強くした。

上映時間:1時間20分。サンフランシスコは5月1日よりルミエール・シアターで上映開始予定。

"The Garden" 英語公式サイト: http://www.thegardenmovie.com/