"Away We Go" (『お家をさがそう』)

『お家をさがそう』写真クレジット: Focus Features Release
最近、妊娠映画が面白い。07-08年にかけて大ヒットした"JUNO" や、望まない妊娠に絡む心理ミステリー"Stephanie Daley"など、女性脚本家の手による作品に秀作が多い。この脚本も妊娠中の女性作家ヴァンデラ・ヴィーダと夫デイブ・エガーズ(ベストセラー『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』の著者)が共同執筆したもの。妊婦と男性パートナーが旅をするロードムービーで、前2作と比べると世代がぐっと上がって30代だ。この時期、一押しのコメディだ。

バート(ジョン・クラシンキ、人気TV番組"The Office" )と妊娠中のベロナ(マヤ・ルドルフ、"Saturday Night Live" の元レギュラー)はバートの両親の近くに住んでいたが、二人が海外に引っ越しすると聞いて愕然。祖父母も交えた愛のある環境で子供を育てられるという夢が消え、それならば子供を育てるのに最良の土地を探そうと旅に出かける。米国各地からトロントまで旧友や同窓生などを訪ねた二人は、それぞれの土地で子育てをする夫婦に出会っていく。

シニカルな夫婦や過激な育児論を捲し立てるインテリの夫婦などと再会し、目を白黒させるベロナたちの旅を通して現代のアメリカ家族像が点描される。夫婦作家の手による台詞は辛口で切れがあり、妊婦ならではの体験も笑わせる。空港で妊娠6ヶ月なのに8ヶ月に見えるから搭乗させないと言われるシーンなど、つい吹き出してしまった。

この映画の特徴は、主人公二人が仲が良くて喧嘩をしないこと。30代にもなるというのにキャリア志向もなく、気持ちを合わて幸せな家庭を作ることが夢という大らかさだ。ちょっと浮き世ばなれしているが、それなりの理由も描かれ、行き違いがあればとことん話し合う姿に現実感があった。

監督は去年 “Revolutionary Road” で50年代のアメリカ夫婦の悲劇を描いたばかりのサム・メンデス。極端なカップルが登場するが、アメリカンコメディにありがちな過剰な演出を抑えて、ほどよい笑いが楽しめる洗練されたコメディに仕上げている。陽気でコミカルなバートとおっとりしたベロナを温かく包むように見せた演出も功を奏して、和みのある笑いを楽しむことができた。

両親を演じたジェフ・ダニエルズキャサリン・オハラを始め、母性信仰の大学教授にマギー・ギレンホールなど、脇を固めた俳優たちも芸達者揃いで見どころになっている。
上映時間:1時間33分。サンフランシスコは12日よりセンチュリー9で上映開始。

『お家をさがそう』英語公式サイト:http://www.filminfocus.com/focusfeatures/film/away_we_go/