"Up in the Air"(邦題『マイレージ、マイライフ』)

マイレージ、マイライフ』写真クレジット:Paramount Pictures

主役より脇役が気になる時がある。主役の男に絡む恋人や同僚、上司など女たちがリアルな存在感を持って描かれている映画はできが良い。本作にも手強い女二人が登場する。
一人は有名大新卒の若きエリート、もう一人はやや年長のビジネスウーマン。後者は出張で各地を飛び回り、マイレージもホテルアワードも貯まりまくっている手練だ。この二人に自信たっぷりなジョージ・クルーニーがアタフタとさせられる。硬派だが女に甘いというクルーニーのイメージ通りのはまり役で、小気味良い快作コメディだ。

ライアン(ジョージ・クルーニー)は、企業に出向して社員をリストラするエキスパート。突然の解雇通告を受けた社員のショックを最小限にとどめ、平穏に引導を渡して再出発を促すという仕事のために全米各地の企業を回って年間322日も旅をしている。人間関係のしがらみが嫌いな彼にとって、出張暮らしは理想のライフスタイル。旅先で魅力的なアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と知り合い、カジュアル・セックスを楽しんでいた。

ところが、そんな彼にじゃま者が現れる。新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)が、旅費節減のためにインターネットを使ったシステムを作成して、ライアンの出張生活を脅かす。上司に文句を言うと、ではナタリーに研修させよと命じられ、彼女を出張に同行するハメになってしまった。

アレックスがその有能さとドライな感性で企業戦士として男社会の中を生き抜く様子や、ナタリーが携帯メールで彼氏にフラれる滑稽なシーン等に、今を生きる女がビビッドに描き出され、楽しませてくれる。そんな彼女らと対比するように、マイレージを1,000万マイル貯めるのが目標というライアンの空疎さが見えてくる。
08年に『JUNO/ジュノ』を大ヒットさせたジェイソン・ライトマン監督作品で、『サム・サッカー』の原作者でもあるウォルター・キルンの同名原作をライトマン自身が脚色、演出した。一作目の『サンキュー・スモーキング』から本作でまだ3作目だが、どの作品もハズレがない。

冒頭、解雇通告を受けた何人もの男女がカメラに向けて語るシーンがある。実は最近失職した素人の人たちのナマの声で、彼らの驚きや失望を語る顔が忘れられない。軽快なコメディに不況の実態を一筆書き入れるライトマンの鋭い時代感覚も特筆したい。

上映時間:1時間49分。ベイエリア各地で現在上映中。
マイレージ、マイライフ』日本語公式サイト:http://www.theupintheairmovie.com/intl/jp/