原爆、原発、モンサント


ロスアラモス国立研究所の火事

福島原発の事故以来、日本での放射能汚染問題をツイッターやネットのニュースで追いながら、アメリカの原発について自分は何も知らないなと思っていたら、6月に二つの原子力関連施設で災害が起きた。
7日、大雨のためにミズーリ川が大氾濫を起して、中西部ネブラスカ州フォートカルフーンの原子力発電所が完全に水浸しになったのだ。そのため施設内の配電室で火事が起き、核燃料プールの冷却装置が一時使用出来なくなるという危険性の高い事故が起きた。

この原発は4月から燃料交換のために停止状態だったために、異常な温度上昇などの大事に至らず、米原子力規制委員会も「放射能漏れなどの危険はなかった」と発表しているが、本当のところはどうだったのだろうか。福島の事故の時だって最初の頃は大した事故ではないように言っていたので、どうしても公式発表には疑念を持ってしまう。

しかも、この原発事故のことをネット上で詳しく調べようとしても、同じ内容の短い報道しかヒットしなかったのにも驚かされた。原発事故にはニュースバリューがないのか、報道規制のようなものがあるのか、どうなんだろう。なんて思っていたら、今度は山火事が起きた。

27日、ニューメキシコ州にあるロスアラモス国立研究所の敷地境界付近で発生した山火事のため、敷地内の一部約4,000平方メートルが焼失したのだ。この研究所は、マンハッタン計画と呼ばれた広島と長崎に落とされた原子力爆弾の開発を目的に創設された研究所として有名で、所内にはプルトニウム関連施設がある。

今回の火災に際して同研究所は「地下に保管されている爆発性の物質はコンクリートと鉄骨製の貯蔵庫で安全な状態にある」と発表していたが、7月6日現在も研究所の閉鎖は続いている。この研究所の火事もグーグルニュースで3,000程度のヒット数しかない。少な過ぎないか。

1943年に創設されたロスアラモス国立研究所ウィキペディアで調べると「現在でも核兵器開発など合衆国の軍事・機密研究の中核となる研究所であるが、同時に生命科学ナノテクノロジー、コンピュータ科学、情報通信、環境、レーザー、材料工学、加速器科学、高エネルギー物理、中性子科学、非拡散、 安全保障など、様々な先端科学技術について広範な研究を行う総合研究所でもある。年間予算は22億ドルで、合衆国の頭脳が集まる名実ともに世界最高の研究機関であり、『合衆国の至宝』 と称される。」

なるほど、この火事が大きく報道されなかったのも当然、本当にヤバいことは、こっそりとしか報道されないのだ。

この研究所のことを調べていてさらに興味深い人物を見つけた。チャール A.トーマスという米国の化学者で、彼はマンハッタン計画に関わって実際に原爆を作った学者の一人だ。時は50年代初頭、プルトニウムの供給量と管理は原子力委員会によってコントロールされていたのだが、核兵器の量産のためにより多くのプルトニウムを必要としていた軍事計画側は、新しいプルトニウムの入手方法として商業用原子力発電に注目していた。

そんな中でトーマスは「二つの目的を持ったプルトニウム原子炉を作るべきだ。一つは核兵器のため、もう一つは商用の発電のために。」と、その後の原子力の行方を決定づける発言をしている。同じ頃に米国は世界初の原子力発電に成功していることを考え合わせると、原子力発電が核兵器の材料であるプルトニウムを作るために研究開発された背景が明確になってくる。

このトーマスという学者は当時、今や遺伝子組み換え作物で世界的シェアを持つモンサント社の副社長で、その後社長、会長と登りつめた凄腕の事業家でもあったらしい。モンサント社ベトナム戦争で散布されたダイオキシン類の一種である枯葉剤という除草剤を製造しており、その後遺症で苦しんだベトナム帰還兵らが枯葉剤製造会社に対して集団訴訟を起こしている。

トーマスが会長を辞したのは65年で、その後農薬メーカーから最先端のバイオテクノロジーを駆使して遺伝子組み換え品種を開発し、食物の種子に知的財産権を持たせたり、農家に種子を持つことを禁じるという怪物企業に肥大している。

原爆から原発そして枯葉剤、化学を戦争のため使ったチャール A.トーマス。彼の悪魔的一貫性はどこからきたものなのか。

最後に6月6日に生活クラブ連合会が提出したパブリック・コメントの趣旨を引用したい。
モンサント社が申請者となっているセイヨウナタネについては、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質による土壌の汚染を、菜の花を育てることで除去することが政府レベルでも検討されている最中での申請であり、懸念すべき案件です。モンサント社が被災地への支援として遺伝子組み換えナタネの寄付を申し出るということは、同社のこれまでの行動を考えると、十分にあり得ることです。被災地だから、バイオディーゼル燃料の原料だから、と遺伝子組み換えナタネの栽培が安易に認められることは、あってはなりません。」

トーマスが経営した会社の遺伝子組み換えナタネの花は、絶対、福島に咲かせてはならない。

追記:モンサント社について映画『Food Inc.』の紹介記事でも触れました。http://d.hatena.ne.jp/doiyumifilm/20091229
また、Natural News が何度もモンサントの問題について取り上げていますので、こちらもぜひ。hhttp://ja.naturalnews.com/?tag=%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%88