"Contagion"(原題『コンテイジョン』)


コンテイジョン』写真クレジット:Warner Bros.
米国の俊才スティーヴン・ソダーバーグ監督の最新作は、パンデミック(世界的流行病)スリラーだ。マット・デイモンジュード・ロウケイト・ウィンスレットマリオン・コティヤールなど豪華な配役陣で、猛威をふるう新種ウィルスが引き起こす接触感染の恐ろしさと恐慌状態となる市民生活、その対応に追われる医師たちの姿をスリリング追っていく。
香港から帰国した女性(グウィネス・パルトロー)が風邪の症状から引きつけを起してあっという間に死亡。妻の死を信じられない夫(デイモン)も隔離され、世界中で同じ症状の人々が次々と数日で死亡する最悪の事態が広がる。

米国疾病予防管理センター (CDC) の局長(ローレンス・フィッシュバーン)は対応に乗り出し、疫学調査部門(EIS)のオフィサーとして若い医師(ウィンスレット)をホットスポットへと派遣する。

同時にCDCはワクチン開発の実験を重ねていたが、暗中模索状態。スイスのWHOの感染症専門医(コティヤール)も、ウイルスの発生源をつき止めるために香港に派遣され、困難な感染経路の後追い調査を進めていた。

緩慢に見える対応の中、医療疑惑を追うブロガー(ロウ)が、CDCが真実を隠しているのではないかと声高く非難して、市民の不信感を煽っていく。決定的な対応策を欠いたまま死者数は全世界で膨大な数に昇り始め、感染地域からの脱出を禁じられた市民たちはいよいよ狂気のパニック状況に追い込まれていく。

オーシャンズ11』や『チェ』など多様な映画作品を撮り続けているソダーバーグ監督作品の中では、世界を舞台とするスケールの大きな作品だ。WHOから国土安全保障省、CDCなども絡んで登場人物がかなり多いのだが、それぞれの抱えるパンデミック対応の問題点を手際よく描き分けた手腕はさすがと思わせるものがある。

だた、上映時間が2時間に満たないためか、早口で状況を捲し立てられているような忙しさがあり、ワクチン開発を解決のカギとした単純明快なエンターテイメント作品という印象が残った。

パンデミックと言えば2009年春頃から世界中で蔓延した新型インフルエンザが記憶に新しい。あの時日本ではマスクが売り切れたが、本作をみて強く思うのは今でもマスクに長袖で通学している福島県の子供たちのことだ。ワクチンである程度防げる感性症に比べて、ワクチンでは防げない放射能汚染の恐ろしさを再確認するのは私だけではないだろう。

上映時間:1時間 46分。サンフランシスコは主要シネコンで上映中。
コンテイジョン』英語公式サイト:http://contagionmovie.warnerbros.com/index.html