“FUKUSHIMA, Never Again”


2011年11月6日、反原発・反失業 全国労働者総決起集会から。
写真クレジット:Labor Video Project.

2月に当地でプレミアされた "FUKUSHIMA, Never Again” というドキュメンタリー映画の紹介をしよう。製作したのはLabor Video Project。スティーブ・ゼルツァーさんと鳥居和美さん夫妻が、昨秋日本に滞在した際に撮った映像をまとめた作品で、放射能汚染の最前線で闘っている福島の人たちの現在の声を伝えている。
映画は、まず昨年10月末に参議院議員会館で行われた「渡利の子供たちを守れ!」の政府交渉から始まる。
「政府は子供を守る気があるのか?」と政府側に詰め寄る親たち。校庭の土を持ってきた佐藤幸子さん(子供たちを放射能から守る福島ネットワーク)は「この土を舐めてください。子供たちは転べばこの土が口に入るんですよ」と迫り、会場は明快な返答を避け続ける政府側に対する不信感と怒りに包まれていく。

次は11月6日の反原発・反失業総決起集会。子供を疎開させたという中手聖一さん(同上)や椎名千恵子さん(未来を孕む女たちのとつきとおかのテントひろば世話人)らが短いが強い決意を感じさせる演説をし、その映像と共に壇上で演説に聞き入る福島の子供たちの姿も映し出された。

その他にも、放射能で汚染した車両の移送問題でJR側と闘った動労の人、福島原発で働く下請け、孫請け労働者の実態の見えない劣悪な労働状況を指摘する東京ゼネラルユニオンの人、自作の講談『チェルノブイリの祈り』を長年講じてきた女性講談師、長期化する放射能汚染の問題と日本に原発が作られるまでの歴史的経緯を手短かに解説する大学教授、福島原発内部告発をした元GEの原発検査官など、脱原発の立場に立って活動する多数の人がインタビューに応えている。

和美さんが里帰りした際に数週間で撮った映像ということだが、短時間でこれだけ多くの人に会い、そのインタビューを通して放射能汚染の多面的な問題を簡潔に提示しているのには感心させられた。FUKUSHIMAと言われてもピンこない当地の人でも、本作を観れば福島の抱える問題をある程度理解することは可能だろう。

最後になったが、本作の中で最も忘れ難いシーンがある。それは宮城県女川町で町会議員に立候補した阿部美紀子さんが出てくるシーンだ。津波被害で生まれた瓦礫を背後に雪の中で「子供たちの未来のために原発を止めよう」と演説する彼女の姿は、それだけで本作を観て良かったと思わせるものがあった。

阿部さんは、1970年に原子炉設置許可が下りた東北電力女川原発の反対運動を、父親の宗悦さんを始め夫や娘さんたちと共に長年続けてきた人だ。本作の中でも高齢の宗悦さんが何度か登場して、気骨のある意見を述べている。「原爆を体験した国民が原発なんかを作るべきではない」という実にまっとうな意見を40年以上も訴え続けてきた家族を通して、「人に感動する」という貴重な体験が出来たような気がする。

Labor Video ProjectはケーブルTVやネット上のストリーミングで主に労働運動に関する番組を製作放映している他に、多数のドキュメンタリーを製作やストリーム上映、DVDの販売を行っている。本作はバイリンガルの映画なので、DVDは英語字幕入りの英語版と日本語字幕入りの日本語版があり、それぞれ20ドルで購入出来る。上映時間は57分。 詳しくはwww.laborvideo.orgまで。