"Robot & Frank”(原題『ロボットとフランク』)


"Robot & Frank”写真クレジット:Samuel Goldwyn Films
海に夕陽が沈む様子をじっと見ていると、太陽が完全に海に隠れる寸前に急にオレンジ色の強い光を放つ時がある。あの光を何と呼ぶのか、どういう現象なのか知らないが、尽きようとする命を惜しむかのような輝きには感動的なものある。人の生涯にも同じことがあるのではないだろうか。
舞台は近未来、リタイアして森の中の家で一人暮らすフランク(フランク・ランジェラ)は、少し認知症の症状がある。遠い街から週一回、彼を訪ねてくる息子(ジェームズ・マースデン)は、散らかった家の中で満足な食事もしていない父が心配でならない。

そこで介護用ロボットを買って父の世話をさせることにする。猛烈に反発する父だがスイッチの切り方も分からず、ガマンして暮らしているうちに、よく気のつくロボットとの生活が快適になり、ついに無謀な計画に熱中し始める。前述の夕陽のように輝き始める主人公、ここから先は見てのお楽しみ、としておこう。

聡明なロボットとある程度の会話が成立し、ボンヤリしていたフランクの頭が次第にはっきりしてきたり、介護用にプログラムされたロボットにはフランクの身を危険を守るインプットはあっても道徳や倫理判断がない点などが、有効に物語に反映されて面白い。SFものというより、ハイテク嫌いの老人とロボットとの暮らしへのユーモアと悲しみが相半ばする秀作だ。

監督は本作がデビューのジェイク・シュライアー、脚本はクリストファー・D・フォード。30代の二人は映画学校時代の同窓で、在学中に日本で介護ロボットが開発されているというニュースを知って、それを題材に短編映画を製作。本作はそれを下地としている。

少子化社会の日本は介護ロボット研究では最先端で、ロボットと暮らす老境は実は我々の未来図、と思って見ると複雑な思いだ。フランクがロボットを友達扱いするごとに、「自分は人間ではありません」とロボットに言われるのはツライ。だが、ベタベタした人間関係の煩わしさがないので介護される分には快適ではないか、など思いは千路に乱れる。

目前にいる人との会話よりも、ケータイの画面の方が気になって会話も上の空、なんて現代人にはビッタリの未来図かもしれない。

デジタル化されてしまう古色蒼然とした図書館で働く司書(スーザン・サランドン)とフランクの関係が実にユニークで、本作に華と深みを添え、ボケたり冴えたりを演じ分けたランジェラも素晴らしい。
上映時間:1時間29分。サンフランシスコはエンバカデロとサンダンス・カブキ・シアターで上映中。
"Robot & Frank”英語公式サイト:http://robotandfrank-film.com/