"girl model"


写真クレジット:"girl model" A First Run Features
痩せた白人少女がグラビアを埋める日本のファッション雑誌。あんな雑誌を見て育てば、自分を美しいと思えない女たちや拒食症の少女が増えて当然と思うが、相も変わらず日本では痩身金髪の少女モデルの需要が高いという。
本作はそんな日本のモデル業界の内幕に迫るドキュメンタリーで、幼い少女モデルと周辺を追いながら、彼女らを平然と騙し、商品として売りさばく業界人の不気味さを捉えている。

シベリアで日本向けのモデルとしてスカウトされた13才(!)の少女ナディアは、多くの候補者の中から選ばれたラッキーガールだ。家族に祝福されて来日するが、成田には迎えもなく着いた途端に右往左往。家計を助けるため日本に来た彼女だが、支度金の名目で多額の借金を負わされており、仕事をしても収入なし。スリーサイズが1cmでも増えればクビという児童福祉法違反どころか人身売買スレスレの状況に置かれている。こんな少女たちを「今度の子はかなりスタイルも良いですよ」と売り込む日本のエージェントは、さしずめ奴隷商人か。

もう一人の主人公はナディアをスカウトしたアシュリー。業界のサバイバーだ。ティーンの頃、日本でモデルをしていた経験を生かして、日本人の好みの少女モデルのスカウトに凄腕を発揮する。まだ30代になるかならないかで米国に大きな邸宅を持ち、文無しのナディアとは対照的。一見やり手のキャリア派に見えるアシュリーだが、彼女が業界について語り始めるあたりから本作は異様さを漂わせる。

彼女はスカウトした少女たちが日本でどんな扱いを受けるのかを百も承知の上でこの仕事をしている。金に困った少女たちが売春していることや、自殺者が出ることまで仄めかすのだが、その語り口には感情の揺れがない。
スカウト時の少女たちの足や靴などを撮ったポラロイドを集めていたり、卵巣膿腫の手術で取り出された塊の写真を見せたり…なにやら薄気味悪いのである。

共同監督の一人がアシュリーと大学の同窓生で、アシュリーの方から記録映画を撮らないかと声を掛けてきた、という話なのだが、アシュリーは一体自分の何を見せたかったのだろう? 

美人でリッチで世界を飛び回る自由も得たアシュリーだが、拒食症の少女と同じ世界に囚われているように見える。だが監督らは、この美しい怪物の正体を捉え切ることが出来なかった気がする。それが本作にある謎と反面のどこかぼやけた印象を残している。

上映時間:1時間17分。
"girl model" 英語公式サイト:http://www.girlmodelthemovie.com/