『Looper』(邦題『Looper/ルーパー』)


Looper/ルーパー』写真クレジット:Columbia Pictures
空想好きの想像力を掻き立ててくれるタイムトラベルを物語に仕込だSFアクション映画を紹介しよう。
舞台は2044年のカンサス・シティ、ジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)はルーパーと呼ばれるギャング組織の処刑人。とは言っても彼が処刑するのは、30年後の未来から送られてきた連中だけ。ガンガン殺して金を貯め、フランスに行くつもりのジョーだが、どこか心は空ろでドラッグにハマっている。

そんな彼の次の処刑ターゲットとして30年後の自分自身(ブルース・ウィルス)が現れた。仰天したジョーは彼を殺し損ねてしまう。殺しの失敗は絶対許されない組織から追われるはめになったジョーは、次第に未来のジョーが彼の人生を破滅に追いやった男を殺すために帰ってきたことを知る。

しかし、狂ったように男を探す未来の自分を殺さなければ、現在の自分が殺される。窮地に立たされた若いジョーは、未来の自分が探す男を突き止めようとするのだが…。

タイムトラベルものならではのディテールが面白く、後半になって話が新たな展開を始め、先の読めない事件が次々と起きていく。30年後の自分と対面する若い殺し屋と、30年前の自分と対面する初老の元殺し屋という設定が絶妙で、意欲的な娯楽映画として楽しめた。

脚本/監督は『BRICK 』や『The Brothers Bloom』のライアン・ジョンソン。インディ色の強かった人だが、本作ではハリウッド的なフォーミュラを使って話を分かりやすくしている。こういう映画はヒットすると思うが、未来のジョーの動機づけが記号的で平凡、現在のジョーの空ろさも描き切れていないという不満は残った。バイオレント映画が苦手の人にもお薦めはできないだろう。

特筆したいのは、巧みなメークと演技でウィルスの若き日を演じたゴードン=レヴィットと、後半に登場するエミリー・ブラントの好演だ。ブラントが銃を構える姿はかなり堂にいっていた。

3次元世界で時間は直線的に存在すると信じられているが、4次元世界では時間は同時並行的に存在すると言われ、それがタイムトラベルの考え方の一つとされている。難しいことの説明はできないが、もしも自分の過去や未来に対面することがあったら、言いたいこと聞きたいことはたくさんある。

上映時間:1時間58分。サンフランシスコはシネコン等で上映中。
『Looper』英語公式サイト:http://www.loopermovie.com/
Looper/ルーパー』日本語公式サイト:http://looper.gaga.ne.jp/