"Before Midnight"(原題『ビフォア・ミッドナイト』)


"Before Midnight" 写真クレジット:Sony Picture Classics
旅先で知り合った米国人のジェシーとフランス人のセシールが、 ウィーンの街で恋に落ち、半年後の再会を誓って別れる(95年『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』)。9年後、再会を果たせないまま、もう一度パリ で再会した二人。ジェシーには妻と子、セシールには恋人がいたが、近況を語りあって過ごすうちに、互いへの感情の存在を意識する(04年の 『ビフォア・サンセット』)。そしてさらに9年、41歳になった2人はどこで何をしているのか? それが本作だ。
主人公男女の会話だけで進むというユニーク恋愛映画シリーズの3作目で、ファンには待望の最新作だ。主役を演じる俳優二人はリアルタイムで年を重ね、ロマンチックな恋に落ちた二人のその後を9年ごとに見せて行く趣向。本作では変化した恋愛の姿と甘くもあり苦くもあった人生の選択を振り返ってとりわけ味わい深い。

ジェシーイーサン・ホーク)とセシールジュリー・デルピー)は結婚していた。パリで暮らす2人には愛らしい双子の娘もいて、夏休みに家族で美しいギリシャの島に来ている。

ジェシーの悩みは前妻と暮らす息子のことで、彼らが住むシカゴで暮らしてはどうかとセシールに打診する。だがセシールの反応は悪く「離婚というのはこんな風にはじまるのよ」と言い出す始末だった。

導入部14分間でこれまでの2人の経緯、現在の生活と悩みなどが簡潔に語られ、観客はまるで旧知の夫婦の会話を聞いている気分だ。あの初々しかった2人がこんな風に成熟し、生活感たっぷりの会話を交わすようになっていたのか。シリーズを18年前から観ている人にとっては、とりわけ感慨深いだろう。

思ったことをポンポンと言葉にする環境活動家のセシールと、ややおっとりした作家のジェシー。2人の会話の自然さはまるで本物の夫婦のようだが、アドリブ・ゼロ。何度もリハーサルを重ねたというデルピーとホークの演技は、俳優としての一つの頂点といえる。知的でセクシー、辛辣だがウィットもたっぷりという息の合った会話の面白さを堪能させてくれた。

また、2人と共に何週間も脚本を練り上げたというリ チャード・リンクレ イターの、素人であれプロであれ演技者から最高の一瞬をもぎ取ってくる監督としての手腕も冴えている。2011年公開の『ベーニー (Bernie)』でも感心したが、米国の実力派監督の一人として、次回作が楽しみな人だ。

さて、果たして9年後の2人は? 50代になった2人にも会ってみたい、という気にさせてくれる極上の恋愛映画で、男性にもぜひおすすめしたい。

上映時間:1時間48分。ハワイ島ヒロ市は26日よりパレス・シアターで上映開始。
"Before Midnight" 英語公式サイト:http://www.sonyclassics.com/beforemidnight/