"Blue Is The Warmest Color"(邦題『アデル、ブルーは熱い色』)


アデル、ブルーは熱い色』写真クレジット:IFC Films
若い女の恋と成長の物語で、今年のカンヌ映画祭で最高賞のバルム・ドールを受賞した。受賞式では審査員長のスティーブン・スピルバーグから監督の他に出演女優の2人にも同賞が贈られ、カンヌ史上初めて俳優がバルム・ドール受賞と話題になった。理由は主演女優二人の勇敢なる演技によるものだろう。熱烈な恋に落ちた若いレスビアンのセックス・シーンを二人は身も心もむき出しに演じて圧倒されるものがあった。
15歳の少女アデル(アデル・エグザルショプロ)は、ある日髪をブルーに染めた美大生エマ(レア・セイドゥ)と出会って、一目惚れ。恋に落ちた二人はあっという間に情熱的なセックスをする仲となっていく。時を経てアデルは教師に、エマは画家としての成功を掴み始め、二人の平穏な生活は続いていた。ところがエマの忙しさにアデルは寂しさを覚え始めるのだった。

熱かった恋が少しづつ日常の中で冷めていく筋書きは誰でも経験のあること。映画世界では今や珍しくないレスビアンの恋愛、その平凡な顛末を3時間以上も掛けて見せてしまうのが本作の底力だ。

確かに長く激しいセックスのシーンは衝撃的ではあったが、見終わってみるとその印象はさほど強くなく、むしろノーメイクで嵐のような恋を演じた主演二女優の果敢なる演技に心が奪われた。とりわけ19歳のエグザルショプロは演技をしているようにまったく見えず、『ラストタンゴ・イン・パリ』のマリア・シュナイダーを彷彿とさせてくれた。

親に堂々とアデルを恋人として紹介するインテリ家庭出身のエマと、最後までカムアウトできない労働者階級出身のアデル。大きな違いを持った二人だが、関係は性愛を通して強く結ばれていた。しかし、性愛の繋がりだからこそ色あせるものがあり、反面執着もまた尋常ではない難しさが巧みに描かれ、その意味では実にフランス映画らしい作品と言えるだろう。

監督/脚本はチュニジア出身のアブデラティフ・ケシシュ。07年の『クスクス粒の秘密』でフランスのアカデミー賞であるセザールの作品/監督/脚本賞を受賞している。

原作は若い女性作家ジュリー・マロのグラフィック・ノベル『Le bleu est une couleur chaude』で、物語はかなり改変されている。マロは本作の性描写に対して「男の快楽を通して描かれている」として監督と作品への反感を表明している。筆者はさほど反感を持たなかったが、女性原作者として当然のデリケートな感覚だと感じた。

上映時間:3時間7分。
アデル、ブルーは熱い色』英語公式サイト:http://www.ifcfilms.com/films/blue-is-the-warmest-color