"Alan Partridge"


"Alan Partridge" 写真クレジット:Magnolia Pictures
人前に出ると突然、体内にあるお笑い細胞が活性化するのか、どんなに真面目な場面でもふざけてしまう人がいる。こういう人は入社面接でもおバカなジョークを連発するだろうな……と思わせるのが、英国コメディ俳優スティーブ・クーガンだ。
本作は、そんな彼が主演して英国のBBCテレビで大ヒットしたコメディ番組『I’m Alan Partridge』 の映画版。シニカルでバカバカしいブリティッシュ・ユーモアがギューと詰まった快作で、口にしていたコーヒーを何度も吹き出してしまった。くれぐれもご注意を。

英国のノリッチで放送されているラジオ番組のDJアラン・パートリッジ(スティーヴ・クーガン)が主人公。ラジオ局が売却されて人員整理が検討される中、アランは自分ともう一人の古株DJパット(コルム・ミーニイ)のどちらかがクビという事態を知る。

パットを悪し様に言って、なんとか自分だけ生き残ったアラン。だがその晩、クビになったパットが銃を持って会社幹部を人質に取り、ラジオ局を占拠してしまう。

しかも、アランの裏切りを知らないパットは、信頼するアランを警察の交渉役に呼び出す始末。自分の番組を取り戻したいパットは、アランをサイドキックとして生のラジオ放送を始め、前代未聞の立てこもり現場からのライブショーにリスナーも参加して、事態はさらに混迷していく。

監督はデクラン・ロウニー。脚本の下地は『ボラット』の脚本家ピーター・ベイナムが書き、クーガンとアーマンド・イヌアッチ他2人がリライトした。台詞のおかしさは極め付きで、饒舌なお調子者で自惚れ屋、軽薄でお下品なアランのキャラクターが冴えまくっている。

加えて、脇役も笑いの凄腕ぞろい。アランの中年アシスタント役のリン(フェリシティ・モンタグ)の天然キャラや、あたかもバカボンのパパゴルゴ13を思わせる、アランと女性警察幹部(アナ・マックスウェル・マーティン)の無言のやり取りなど笑えて仕方がなかった。

クーガンは本国での知名度は高いが、米国ではさほどではない気がする。『ナイトミュージアム』シリーズなど米の大作映画で脇役を演じて強烈な印象を残している。昨年はジュディ・デンチと共演した『あなたを抱きしめる日まで』で脚色もして、多くの脚色賞を受賞した才人だ。

こんなに笑ったコメディは久しぶり。英国的笑いの迷走感を満喫したい方にぜひおすすめしたい。
上映時間:1時間30分。iTune Movie で視聴可能。
"Alan Partridge" 英語公式サイト:http://www.magpictures.com/alanpartridge/