"Teenage"


"Teenage" 写真クレジット:Oscilloscope Laboratories
ティーンエージャーをめぐるドキュメンタリー、否、むしろコラージュ・フィルムと呼ぶべきだろう。米英独の3カ国で撮られた1904年から45年にわたる記録映像と写真に、新たに撮った映像を巧みにコラージュした、飛び切りユニークな作品だ。
MoMA(Museum of Modern Art)などで上映される実験的映像作品に近い独特な手法を使っているが、芸術至上的小難しさはなく、古い映像の中に息づくティーンたちの姿に釘付けにされる78分間だった。

20世紀初頭、子どもと大人の中間世代としての「ティーンエージャー」の概念は存在しなかった。産業革命後の英国で、子どもは週70時間以上も働きそのまま成人したのだ。1920年代、英国で「Bright Young People」と呼ばれる上流階級のティーンたちのボヘミアンなパーティの様子が報道されるようになる。ティーンエージャー世代の誕生である。

29年の世界大恐慌、米国のティーンは一度も職を得ることもできずにいた。同じ頃ドイツではヒトラーユーゲントと呼ばれる10歳から18歳までのティーンを集めたナチスの青少年団体が組織され、30年代後半になると米国のアフリカ系のティーンの中でスイング、ジルバが大流行する……。

欧米社会の経済的発展とともに、政治的に組織されたり自然発生的に生まれたティーン世代の当時の意見や考えが彼・彼女らの日記の文章から抜粋され、映像とともに朗読される。
声の出演はベン・ウィショージェナ・マローン、ジュリア・ハマー、ジェシー・アシャー。ティーンに焦点をあてつつ批評的歴史観を提示しようとした試みではなく、時代と国に関係なくティーン世代の持つ未来を作ろうとする、弾ける精神性を描き出そうした試みに見えた。

本作の下地になったのは、英国のパンクロック・ジャーナリスト、ジョン・サヴェージの同名の著書。彼の著書を愛読していたマット・ウルフ監督が映画化を思い立ち、サヴェージと共に膨大な過去のフィルムや写真を集め、映像作品として使えるエピソードの取捨選択をしたようだ。

作中で古い映像の間に挿入される新しい映像も古色蒼然とした処理が施されており、どこまでが記録映像なのか分からないほど凝った作りになっている。

日本にも欧米的ティーンと呼べる世代が存在するのか? 団塊世代は受験勉強に明け暮れていたし、現在のティーンもスマホとゲームに我を忘れているように見える。弾けるティーンという概念は欧米文化という気がしないではない。

上映時間:1時間18分。
"Teenage" 英語公式サイト:http://www.teenagefilm.com/