"Edge of Tomorrow" (邦題『オール・ユー・ニード・イズ・キル』)


オール・ユー・ニード・イズ・キル』写真クレジット:Warner Bros. Pictures
近未来、欧州全土は宇宙から来たミミック(「ギタイ」)なる半生物体の攻撃を受け、ほぼ壊滅状態に落ち入っていた。地球防衛軍のスポークスマン、ケイジ中佐(トム・クルーズ)はロンドンに呼ばれ、前線に行くことを命じられる。
戦闘経験のまったく無い彼は抵抗するが、有無を言わさずフランス沿岸の最前線へ送られ、闘う間もなくあっけなく戦死。ところ死んだ次の瞬間、彼は前日の朝に戻っていた。それからいうもの、彼は戦死しては翌日に戻るというタイム・ループに入り込んでしまう。
そして、防衛軍最強の戦士リタ・ヴラタスキー(エミリー・ブラント)と出会い、彼女も同じ体験をしていることを知るのだった。

主人公が同じ時間を何度も繰り返して生きるというプロットが『恋はデジャ・ブ』と同じだなと思っていたら、原作が日本にあった。
桜坂洋が書き、安倍吉俊が作画した『All You Need Is Kill』というライトノベルだ。日本のアニメやゲームででしばしば登場する「ループもの」というジャンルが入るらしい。

『恋はデジャ・ブ』は、自己チューの嫌味な男が何度も生き直すことで人間として成長していく、という仏教的な話で面白かったが、本作では弱い主人公が何度も生き直すことで強い戦士に成長していく。ヒーローばかりを演じていたクルーズが腰抜けを演じるというのがミソ。ドラマ出演が多かったブラントも武闘派を好演、撮影中は妊娠初期だったという話には驚いた。

ケイジとヴラタスキーの二人は何百回と生き直しながら、なんとかミミックを撃退する方法を探って行く。多くの障害を乗り越え先へ先へと駒を進めていく過程に、手を替え品を替えといった感の工夫が凝らされ、飽きさせない。原作は未読だが、この多様さはシリーズで書かれた原作に負うところが大きいのかもしれない。

監督は『ボーン・アイデンティティ』のダグ・リーマン。記録映画的手法の切れのいいアクションと緊張感溢れるサスペンスに凄腕を発揮する人で、本作も彼の手腕が充分に生かされてる。

ケイジは戦闘に慣れず、すぐに怪我をするのだが、怪我をすると先に進めないので、ヴラタスキーが毎回彼を撃ち殺して、ふりだしに戻る。何度も殺されるケイジだが惨さはなく、むしろ「またか」と笑えてくる。

死んでも生き返ることが出来るなら、怖いものは無いとも言えるが、同じ日が永遠に続くというのはどうだろうか。想像するだけで寒気がすると同時に「ループもの」が定着しているという日本のオタク文化の根にある閉塞感が感じられる。同じことの繰り返しから抜け出せないというは、魂の牢獄ではないだろうか。

上映時間:1時間53分。米国、日本のシネコン等で上映中。
"Edge of Tomorrow" 英語公式サイト:http://www.edgeoftomorrowmovie.com/
オール・ユー・ニード・イズ・キル』日本語公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/edgeoftomorrow/