"TITUS"

シェークスピアの作品の中では映画化されたことのない悲劇『タイタス・アンドロニカス』を舞台演出家のジュリー・テイモアが初監督。女性監督のデビュー作とは思えない3時間の大作だ。

ローマに凱旋した将軍タイタス(アンソニー・ホプキンス、『羊たちの沈黙』のヘクター教授を彷彿)と、敵国から連行してきた人質の女王(ジェシカ・ラング、怖い!)との血で血を洗う復讐の物語。シェークスピアは拷問や殺人の方法についてもなかなか創造力豊かだったようで、その野蛮さ残虐さに3時間付き合うのはかなりの気合いが必要。

ローマ時代の設定に、オートバイやコンピューターゲームなどを登場させたりして、人類の暗黒時代を現代に蘇らせようとした意図が面白い。衣装やセットなどもかなりユニークで想像力に溢れ、舞台劇のような魅力的な作りになっていて感心するのだが、感心すればする程イタリアの巨匠フェリーニの『サテリコン』の息を飲むような造形美が思い出されてならなかった。所詮、復讐と退廃の美の狂宴でイタリア人にかなう民族はいないということか。