"Romy and Michele's High School Reunion"

写真クレジット:Buena Vista Pictures Distribution

女が主人公でゲラゲラ笑えるコメディは、多くない。残念ながらコメディは、まだまだ男のテリトリー、と言ってしまうのもシャクなので、今回は女主人公が笑わせてくれるコメディを紹介したい。 "Romy and Michele's High School Reunion" (97年、邦題『ロミーとミッシェル』)。おしゃれなファッションに身を包んだ二人のブロンド美人が、同窓会に行って騒動を巻き起こす話だ。

ロスのベニスビーチで、ノン気な共同生活をしているロミー(ミラ・ソルヴィーノ)とミッシェル(リサ・クードロウ)は、オシャレが生きがいの親友同士。自分たちのデザインしたドレスで着飾り、クラブに出かけるのが大好きだ。ある日、同級生だったヘザーとばったり。田舎の高校で同窓会があると知って大興奮。お高くとまった女の子グループにイジメられていた二人は、同窓会で彼女たちを見返してやろうと決心する。

女が女を見返す武器はもちろん、容姿!男!仕事!(とほほ)という訳で、ジムに通いつつ、オシャレな仕事や素敵な男を探しにロスの街に出るが、結果は散々。第二のプランとして、大発明をしたビジネス・ウーマンに成りすますことに。借りものジャガーに乗り、黒いビジネススーツを着込んで、イザ同窓会へ。しかし、二人は旅の途中で大げんか。その理由?「どちらがキュートか」。アーア、ナニやってんだか。先が思いやられる二人の同窓会はいかなることに…。

ファッションをキーワードにした、たあいないお話なのだが、たあいないことに必死になるのがドタバタコメディの身上。イエール大卒の才媛ソルヴィーノと、名コメディアンヌのクードロウの二人の息も合いまくって、楽しいことこの上ない。また、主要登場人物がすべて女なので、女を見る男の視線がなく、女たちは伸び伸びと個性を発揮して、女子校の賑やかさだ。
シニカルで孤独だったヘザーは事業で大成功しても、今だにシニカルだったり、かつての意地悪同級生がファッション・センスで二人の危機を救ってくれたり…。女たちの高校時代と今の違いをくっきりと描き分け、笑わせてくれる。

女が主演するコメディには、ジュリア・ロバーツメグ・ライアンなどが主演するロマンチック・コメディという人気の高いジャンルがある。恋をめぐる思い込みや行き違い、誤解で笑わせる話だが、この映画に出てくる恋は主人公たちのゴールではない。二人にとって大事なのは「私たちが一番オシャレでキュート」であることの証明。男の気をひくためにオシャレしてる訳じゃないのよ、という女の子っぽい世界だ。だから、二人には恋する女の捻れたプライドや自己不信が皆無。彼女たちの無垢な愛らしさが、この映画の大きな魅力になっている。

ドタバタの末に、一人だけが男を掴むのだが、二人の友情は健在。エンディングでは、「キャー、カワイイ!」という痺れるようなオシャレの快楽を二人で手に入れ、ハッピーな二人。そこには、恋にふり回される女たちにはない、突き抜けた明るさが広がる。大笑いしながら「恋はいっときでも、女の友情は一生ものよ」って気になったりもするのだ。

脚本はもちろん女性のロビン・シフ。監督はヒットTVマンガ『ザ・シンプソンズ』の製作総指揮をしたデイヴィッド・マーキン。ヘザー役のジャニーン・ギャロファロや、ミッシェルに夢中だったオタクにアラン・カミングなどクセのある脇役がいい味を出し、シンディ・ローパーなど80年代のポップスもふんだんに流れて、気分はピンクの風船プーカプカ。オシャレが苦手な人でも楽しめるコメディだ。上映時間:1時間31分。