"Gentlemen Prefer Blondes"


"Gentlemen Prefer Blondes" 写真クレジット:Twentieth Century-Fox


この映画、クリスマスなどによく観ているような気がする。のんびり過ごす祝日にピッタリ。マリリン・モンローが出演している映画の中では一番好きな作品だ。邦題は『紳士は金髪がお好き』という古めかしさで、製作年度は1953年。なんといってもミュージカルというのが大好きな理由。毎回、出だしからしてワクワクさせてくれる。

タッ、タッ、タッ、ターラタラ…高らかなトランペットの響きを合図にカーテンの中から登場する二人のダンサー。右がジェーン・ラッセル、左がモンロー、大胆なスリットが入った真っ赤なラメのドレスを着込み、頭には大きな羽飾り。真っ白な毛皮を客席に向けて投げ、"We are two little girls from Little Rock ..." と歌い、踊りだす。その超ド派手な明るさにボーッとなってしまう。

53年にこの映画を初めて観た観客は、大画面で華やかに歌い踊る二人の姿に陶然としたのではないだろうか。とりわけ、甘くハスキーな声で歌い、溌剌と踊るモンローの愛らしさに魅了されたに違いない。

物語は他愛のないもの。ニューヨークのダンサー、ローレライ(モンロー)は富豪の息子ガスと婚約中。パリで結婚する予定がガスの予定で延期になり、親友のドロシー(ラッセル)をお目付役として二人はフランス行きの豪華客船に乗り込む。ところがこの船にはガスの父親が送り込んだ探偵が乗船しており、ローレライの素行に目を光らせていた。それを知らないドロシーは、この探偵に恋してしまう。

一方、ローレライは船上でダイアモンド鉱山を持つ大富豪の老人と親しくなり、彼のダイアモンドのティアラをちょっと拝借。これがトラブルになってパリに着いてから大騒動…、というお話だ。

貧乏な男ばかりに恋をするドロシーの気が知れないローレライは、彼女の先行きを心配しているし、ドロシーはローレライの金持ち好きに呆れながらも、互いに堅い友情で結ばれている。

ティアラ問題でローレライを救うため一肌ぬいでくれるドロシーは、気っぷの良いアネゴタイプ。若い女がダンサーとして生きて行くための心強い相棒でもある。正反対の価値観だが、男問題で仲違いすることなく仲良くやっている二人は、今みても古くさい感じがしない。いやむしろ、今や女同士のこんな友情が消えつつあるのではないか。ハイソを狙う平成のローレライは、もっとシビアだからだ。そんな役柄もモンローが演じると、無邪気で悪気がないから不思議。

失意のパリでローレライが「愛よりもダイアモンドを」と歌う "Diamonds Are A Girl's Best Friend" のおかしみ。「男の気持ちが離れて、魅力を失っても、ダイアモンドは永遠よ」と歌い上げてミもフタもないが、これほどはっきり歌われるとかえって清々しい。

このダンスシーンはこの映画の白眉。マドンナが "Material Girl" のミュージック・ビデオでまねしているが、物欲が際立って本家のユーモアが消えてしまった気がする。時代の差なのかもしれない。

モンローが金と容貌がすべてと歌い踊って、そのユーモアを明るく笑える時代があった。今や小学生がダイエットをする時代。金と容貌こそが唯一のパワーと信じ込み、そのアケスケさを笑い飛ばす余裕や、さまざまな価値観を許容する社会の弾力性が失われてしまった気がする。

なんて、最後に真面目になってしまったが、パーティなどでアトラクションとして女友達と観るには最高の映画だ。監督は『脱出』で紹介したハワード・ホークス

上映時間:1時間31分。