"Wall-E"など

[DVD紹介] "Wall-E"(2008年、邦題『ウォーリー』)

写真クレジット:Pixer
700年間、荒れ果てた地球でゴミ処理をしてきた孤独なロボット、ウォーリーが空からやってきた真っ白なロボットに恋をした…。典型的なボーイ・ミーツ・ガールのお話に、環境破壊やアメリカ消費文化批評などを織り込んだ3Dアニメ。動画の神髄を極めた感のある台詞無しの導入30分がダントツに光る。言葉をほとんど話さない二台のロボットが互いを呼び合うデジタル音声(クリエイターは『スター・ウォーズR2-D2の声を作り出したベン・バート)が実に愛らしい。監督は "Finding Nimo" のアンドリュー・スタントン


[DVD紹介] 『五条霊戦記 GOJOE』(2000年)

写真クレジット:Pioneer
平家の武者を狙って京都の五條橋に出没する「鬼」とそれを退治せよとお告げを受けた破戒僧の対決。おなじみの牛若丸と弁慶の物語を、飛び抜けて斬新な解釈で描き直したアクション時代劇の大作。日本的魔界が禍々しく描かれ、最後の最後まで目が離せない。やや荒削りな印象があるが、作り手たちの新しい時代劇作りへの意欲が感じられる快作だ。監督は今や懐かしい『狂い咲きサンダーロード』の石井聰亙
出演:浅野忠信、隆大介、永瀬正敏岸部一徳


[DVD紹介] "Nine Queens"(2000年、邦題『華麗なる詐欺師たち』)

写真クレジット: Sony Pictures Classics
詐欺師同士の騙し合いを、実際に使われている手口を次々と紹介しつつ、スリリングに見せるアルゼンチン映画。純粋にプロットの面白さだけでグイグイと観る者を引っ張っていく極上の犯罪映画だ。公開当時のアルゼンチンで大ヒットし、かの地の映画賞を総なめにした。絶対に先が読めないことうけ合い。犯罪サスペンスものが大好物という人にぜひお薦めしたい。
監督:ファビアン・ビエリンスキー
出演:ガストン・ポールス、リカルド・ダリン、レティシア・ブレディス


[DVD紹介] "The Corporation"(2004年、邦題『ザ・コーポレーション』)
資本主義社会における企業の性格を抽出すると、ジコチュウで嘘つき、冷酷で人間関係を維持できないなど人間なら完全に人格障害と診断される。そんな企業に就職し毎日仕事に励む現代人。私たちに意識の隅々まで染み込んだ企業の論理と企業社会が支配する現代社会の恐るべき現状をあぶり出した衝撃的なドキュメンタリー映画。会社と無縁の人も必見。目からウロコがポロポロ…。
監督:マーク・アクバー
出演:マイケル・ムーアノーム・チョムスキーなど多数
ぜひ覗いて欲しい日本語公式サイト:http://www.uplink.co.jp/corporation/


[DVD紹介] "Once"(2006年、邦題『ダブリンの街角で』)

写真クレジット:Fox Searchlight
街角で自作の曲を歌う青年と夫に去られたチェコ移民女性との静かな出会い。音楽を通して互いを知り合い、曲作りをしながら孤独な心を癒しあっていく男女をデリケートなタッチで描いたアイルランド映画の秀作。女性主人公を演じたチェコ出身のイルグロヴァの清潔感のある美しさや、透明感のある主題歌 "Falling" が忘れ難い。
監督・脚本 : ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、 マルケタ・イルグロヴァ


[DVD紹介] "The Edge of Heaven" (2007年、邦題『そして、私たちは愛に帰る』)

写真クレジット:Strand Releasing
去年夏、サンフランシスコで一館上映ながらロングランを続けた静かなヒット作。ドイツで生きるトルコ移民の厳しい状況を背景に、度重なる悲劇を乗り越えようとする家族の愛と絆を描く人間ドラマの力作だ。トルコ人娼婦を殺した父の贖罪の旅に出る息子と、娼婦の娘、その娘に恋をしたドイツの娘とその母。愛し合う娘たちと3家族が織りなす人生の試練が鮮烈な映像で描かれる。監督/脚本はトルコ出身のファティ・アキン。07年のカンヌ国際映画祭最優秀脚本賞受賞。
出演:バーキ・ダヴラクハンナ・シグラ、 ヌルセル・キョセ


[DVD紹介] 『細雪』(1983年)

写真クレジット:東宝
三女の縁談をめぐる船場の姉妹たちのおっとりした日常些事を描く。ほのかな色香を漂わせる女優たちの美しさにはじまり、嵐山に煙る桜や紅葉、豪奢な着物や帯など、淡い色彩で映し出される日本の美再確認映画。三女の縁談よりも仕事を優先する夫を強く叱る蒔岡家のいとはんが体現する女性論理が新鮮だ。日本の古典的な女性映画はこの作品で最後かも。原作は谷崎潤一郎、監督は市川崑
出演:岸恵子吉永小百合佐久間良子古手川祐子伊丹十三石坂浩二


[DVD紹介] "La Haine"(1995年、邦題『憎しみ』)

写真クレジット:101 DISTRIBUTION
パリの移民が集まるゲットーで起きた暴動を発端として、失業中のユダヤ系アラブ系アフリカ系の三青年が過ごした嵐のような一日を軽いラップのノリで描いていく。青年の一人が警官の銃を拾ったために起きた事件を通して、フランスの人種/移民差別を浮き彫りにした衝撃作。監督/脚本は『アメリ』に出ていたマチュー・カソヴィッツ。DVDではジョディ・フォスターが推薦の言葉を寄せている。
出演:ヴァンサン・カッセル、ユベール・クンデ、サイード・タグマウイ


[DVD紹介] "The Leopard" (1963年、邦題『山猫』)

写真クレジット:Titanus
映画の世界遺産、華麗なる一大叙事詩など最大級の賛辞が並ぶルキノ・ヴィスコンティ監督中期の傑作。19世紀のイタリアを舞台に、没落する貴族の当主が台頭する新勢力を軽い侮蔑と諦観を持って見つめる姿が、豪華な背景と重厚な演出で描かれていく。共感しにくい物語であるにも関わらず、消えゆく階層への哀感に胸が締めつけられる。これが時を越えて生き残る古典映画の力というものなのだろうか。
出演:バート・ランカスターアラン・ドロンクラウディア・カルディナーレ


[DVD紹介] "Si Sos Brujo: A Story of Tango" (2005年)

写真クレジット:Primer Plano Film Group
ロックン・ロールの登場で世界中の伝統音楽が消えた。だが、消えたアルゼンチン・タンゴの伝統をたぐり寄せようと動きだした音楽家たちがいた。そんな若い演奏家たちを追ったアルゼンチンのドキュメンタリー映画だ。レコードだけを頼りに練習を重ねていた彼らが、敬愛するバルカルセなどの演奏家たちを見つけ出し、直に演奏の手ほどきを受ける姿が感動的。アコーデオンに似たバンドネオンが奏でる情熱的なタンゴの調べに心も躍る。
監督:キャロリン・ニール
出演:エミリオ・バルカルセ、レオポルド・フェデリコ