"The Hunger Games Mockingjay Part 1"(原題『ハンガー・ゲーム:モッキングジェイPart1』)


ハンガー・ゲーム:モッキングジェイ Part1 』写真クレジット:Lionsgate
2度目のハンガーゲームの末、カットニス(ジェニファー・ローレンス)は反乱軍に救出され、倒壊した第十三地区地下に作られた秘密基地で目を覚ます。幼なじみゲイル(リーアム・ヘムズワース)と再会を果たした彼女は、恋人同士を演じた戦友ピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)が救出されていないことを知って衝撃を受ける。
一方、反乱軍を率いるコリン(ジュリアン・ムーア)は、カットニスの勇敢な戦いが人々を反乱へと駆り立てていることを知らせ、彼女に反乱のシンボル「モッキングジェイ」になるよう説得。ピータの行方が不明なまま、プロパガンダのヒロインを演じるカットニスだったが、彼女の心はピータへの想いから曇っていた。

米作家スーザン・コリンズの書いた同名ベストセラー小説の映画化第三作目。米では公開2週足らず2億2,500万ドル以上も稼ぎ出した超ヒットシリーズだ。『トワイライト』続くヤングアダルト向けの物語で、架空社会を舞台に悪政と闘うことになった16歳の少女を主人公にしたアクション満載のドラマ。

本作は最終章のPart 1でPart 2は来年冬公開。一つの話を二つに分けて稼ごうという商魂丸見えの企画ではある。そのためか、本作はアクション映画としての動きはあまりなく、カットニスの内面と彼女をヒロイン化する反乱軍のプロパガンダの様子が描かれる。

そもそも、貧しい若者が飢えの中で死闘を繰り広げ、生き残った一人が英雄となるというハンガーゲーム自体がプロパガンダ。ゲームはパネムという独裁国家の反乱抑制機能を果たしており、前2作ではキャピトルの貴族社会を守るためにスノー大統領(ドナルド・サザーランド)と腹心らが、ゲームを盛り上げる様々なショーやイベントを催していく。

ショーに熱狂する観客の姿は、そのままTV番組に釘付けになっている私たちの姿でもあって、愚民政策と言ってしまえばそれまでだが、メディアの果たす役割の大きさが繰り返し描かれる。だから反乱軍も彼女への人気を利用する。破壊された街で怒りを募らせるカットニスに反乱軍の女性が「どう思っているか言って」と演出指導する場面は、大真面目だからこそ滑稽でもあり、作り手の批評性を感じた。

悪政側と反乱側それぞれのプロパガンダに利用されるカットニスの運命は?彼女を想うピータとゲイルとの三角関係の行方は?というところでPart 2。

本作でもカットニスを力一杯演じたローレンスの好演が見どころで、家族思いで知力体力戦闘力に長けた少女戦士という非現実に、現実感と肉体を与えた功績は大きい。
勇敢で感情豊かな女性ヒロイン像を造形し、若い女性観客向けのほのかな恋愛要素も盛り込んで、シリーズを中ダレさせずに乗り切った感じのPart 1。見終わると早くPart 2を観たいという気にさせられた。

上映時間:2時間3分。全米のシネコン等で上映中。

"The Hunger Games Mockingjay Part 1" 英語公式サイト:http://www.thehungergamesexplorer.com/us/epk/mockingjay-part1/
ハンガー・ゲーム:モッキングジェイ Part1 』日本語サイト:http://www.hungergames.jp/