"Shaun the Sheep Movie"(邦題『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』)


ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』写真クレジット:Lionsgate
ショーン(ジャスティン・フレッチャー)は仲間や働き者の牧羊犬ビッツァー(ジョン・スパークス)と牧場で楽しく暮らしていたが、1日だけお休みを取ろうと計画。牧場主をトレイラーの中で眠らせてしまう。ところがこのトレイラーが勝手に動き出して坂道をゴー、なんと近くの街まで暴走してしまう。
彼を連れ戻そうと街に出かけたショーンたちだが、動物収容センターのトランパー (オミッド・ジャリリ)に見つかり、街中を逃げ回る大冒険が始まる。

人気シリーズ『ウォレスとグルミット』(ニック・パーク監督)で知られる英国のストップモーション・アニメ(以下SA)・スタジオ、アードマンの最新長編作品。『ひつじの…』は『ウォレス…』シリーズのスピンオフとして誕生し、TVでシリーズ化されたSAで、声の出演はあるが台詞がなく、マペットたちの表情や動きだけで見せていく高度なアニメ世界。

牧場主などディフォルメされているのにリアルな人間味とユーモアがあり、ヒット映画からのレファレンスなども多く、アードマンらしい工夫が凝らされた極上のアニメだった。

SAは一人のアニメーターが一日で2秒分のコマしか撮れないという気の遠くなるようなプロセスで作られる。本作でも20のセットの撮影が同時進行、完成に6年も掛かった。そのかいあって、ショーンの白い毛のフワフワしたタッチからビッツァーのおでこや口の変化、凝ったセットデザインまで、細部に手作り感がギッシリつまった完成度の高い作品になっている。

ショーン生みの親パーク監督の特徴は、マペットの動きだけで見せる台詞なしのSA。彼が一人で完成させた初期の傑作『チーズ・ホリデー』の指の跡が残るマペットの生き生きとした表情と動き、人と犬が繰り広げる言葉のない詩的な世界に魅了されたものだ。

その後『快適な生活』『ペンギンに気をつけろ!』など優れた中短編アニメを製作し、アカデミー賞短編アニメ賞を何度も受賞している。00年に米のドリームワークス組んで初の長編『チキンラン』を監督し、人気俳優を使った台詞のあるアニメに進出、大ヒットさせたが、05年の『ウォレス…』の初長編『野菜畑で大ピンチ!』、08年『ベーカリー街の悪夢』などでは初期のスタイルに戻って台詞なし。正解だったと思う。

本作では製作総指揮という立場で、脚本/監督は『野菜畑で大ピンチ!』などの脚本家マーク・バートンと、『ひつじのショーンTVシリーズの監督リチャード・スターザックが担当し、パーク世界がしっかり継承されている。望むべくは彼に初期の荒削りでも手のぬくもりが伝わるマペットの短編をまた作って欲しいのだが…。

上映時間:1時間25分。
“Shaun the Sheep Movie”英語公式サイト:http://shaunthesheep.com/movie
ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』日本語公式サイト:http://www.aardman-jp.com/shaun-movie/